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藤井フィーバーだけど「将棋会館の建て替えには恥ずかしながら資金面が…」 クラファン開始の実情を中村太地七段が正直に語る

posted2021/12/02 11:05

 
藤井フィーバーだけど「将棋会館の建て替えには恥ずかしながら資金面が…」 クラファン開始の実情を中村太地七段が正直に語る<Number Web> photograph by Kyodo News

2019年、羽生善治九段と藤井聡太七段(ともに段位は当時)の対局。数々の名局が生まれた東京・将棋会館も転機を迎えている

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中村太地

中村太地Taichi Nakamura

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NumberWebでは将棋の“競技的”な側面を中心に、王座獲得経験のある中村太地七段に将棋の奥深さについて定期的に語ってもらっている。今回は史上最年少四冠を達成した藤井聡太竜王の進化や対局場について語ってもらった(全3回/#1#2

 将棋会館で開催される対局以外にも、先日開催されたJT杯のような公開対局という歴史もあります。これは今や「観る将」の皆さんと私たちをつなぐ、本当に大事な対局となっています。

 公開対局の歴史について、最初は1975年、竜王戦の前身「十段戦」で行われた蔵前国技館対局、そして続いて第2期竜王戦と言われています。羽生先生が19歳で竜王獲得した時のタイトル戦としての記憶が強いですが、その対局について公開することを島(朗)先生がご提案されたそうです。ここから公開対局するという流れが徐々に広がり、カメラを入れるなどの中継スタイルにも柔軟に対応してきた流れです。

 ちなみに仮定の話ですが、2021年現在で公開対局がなく、カメラを入れていない世界線があったとしたら――将棋は非常に大変な状況になっていたと思います。

 ここ近年「観る将」になられた方にとってみれば「藤井(聡太)竜王の対局姿が見られるから面白い」というのは間違いなくあるはずです。

 藤井竜王のすごさについて、棋譜だけで果たして何人に伝わるかというと……。対局での緊迫感が現場や映像で伝わるからこそ、楽しんでもらえると確信しています。何より将棋のゲーム性を鑑みつつ、発展していくという方向性を考えると、広く開いた方がいい。江戸時代から広く一般の人達に楽しみ、親しまれてきたという歴史がありますからね。

フランスでの竜王戦に記録係として行った思い出も

 現在はコロナ禍で機会がないのは残念ですが、海外対局も実施された時期がありました。有名な「渡辺-羽生の第21期竜王戦」(※羽生名人/当時が3連勝し、そこから渡辺竜王が4連勝して防衛に成功)の第1局がフランスのパリで開催されました。当時の私は新四段になりたてで、記録係として同行することになったんです。

 フランスは日本文化を取り入れてくれる素養がある国と聞いていましたし、現地の方でも将棋を愛好されている方も多く、非常にありがたい環境でした。和服を着て正座して対局する姿は、フランスの方は見慣れないものでしょうし、その珍しさを堪能していただいているように感じていました。

 渡辺名人と羽生先生は対局者で、なおかつ現地の来賓などとのご挨拶もあって非常に大変だっただろうな……と敬意を払いつつも、海外対局の雰囲気を楽しめたことは大きな経験となりました。

「新・将棋会館」への建て替えという転機

 そんな対局場について、現在大きな転機を迎えています。それは「新・将棋会館」への建て替えです。

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