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筒香が2年前に問いかけた…少年野球、母親たちの「お茶当番」問題は改善されたのか? ある監督のため息「チームが託児所代わりになった」
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byGetty Images
posted2021/11/27 11:02
小学生の軟式野球プレイヤーは減少の一途だという。その一因として注目されているのが、少年野球チーム内の「お茶当番」だ
レク係、合宿係、広報係…本当に必要?
「とはいえ、当番制にすることで負担を平等にしようという発想も、間違っていると思います。土日に仕事がある場合やなんらかのハンディキャップを持っている場合など、『やらない』のではなく『やれない』人もいますから、柔軟に対応してチームで助け合う必要があります。あるチームでは『当番に例外はない』として車椅子のお母さんも当番をさせられていました。別のチームでは『下の子が2歳児以上なら親は当番をやる』という決まりのもと、赤ちゃんを抱っこしながらグラウンドに来るお母さんもいたそうです。こうなると異常な世界です。だいたい、子どものスポーツでは、困っている仲間や、ハンデがある仲間がいたら助けようと教えるのが大人の役目ですから、大人同士もそうすべきでしょう」
また、お茶当番をなくしても、負担はゼロにはならない。
「少年野球には、お茶当番以外にも係が多いんですよ。クリスマスの催しをやるレクリエーション係とか、合宿係とか、写真を撮る広報係とか。いまのチームの実情に照らして、それが本当に必要なのか、しっかりみんなで話し合うべきです。ぼくとしては、やれる人がやれることをやればいいだけだと思います。それに、必要ない役割を作って『負担が大きい』と騒いでいるケースもある。休憩時間になるたびに子どもにお茶を注いで回るお母さんとか、練習中にグラウンド整備や草むしりをするお父さんとか。これらはすべて子どもたちができることだし、やるべきこと。小学校高学年になれば、ネットの補修、審判、車の送迎以外はみんな子どもができてしまいます。大人が手を貸せば貸すほど、子どもは自主性を失い、自分で考えることをしなくなる。それが野球のプレーや日常生活にも悪影響をもたらすとぼくは考えます」
日本の少年野球では、保護者の当事者意識の希薄さ、負担をめぐる悪しき平等主義、そして子どもに対する過干渉が混在しているように見える。このような状況は日本独自のものなのだろうか。後編ではアメリカの少年野球の「お茶当番」問題を探る。<後編へ続く>
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