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93年日本シリーズ第7戦、野村克也は黄色から“ピンクのパンツ”にはきかえた「ゲンを担いで少しでも不安が取り除かれるのなら…」

posted2021/11/27 11:00

 
93年日本シリーズ第7戦、野村克也は黄色から“ピンクのパンツ”にはきかえた「ゲンを担いで少しでも不安が取り除かれるのなら…」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

1993年10月22日、日本シリーズ開幕前の前日練習で言葉を交わす西武の森祇晶監督とヤクルトの野村克也監督。前年から続く名将同士の“知恵比べ”はついにクライマックスを迎えた

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長谷川晶一

長谷川晶一Shoichi Hasegawa

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Sankei Shimbun

ヤクルトとオリックスによる白熱した戦いが続く今年の日本シリーズ。93年の同シリーズはヤクルトが先に王手をかけながら、王者・西武の粘りで逆王手となり、前年に続いて第7戦までもつれ込んだ。ヤクルトを率いる野村克也は、初の日本一に向けてラッキーカラーのパンツを着用。一方、西武の黄金時代を築いた森祇晶は「常勝軍団」に変革期が訪れていることを感じていた(全2回の1回目)。※本稿は『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)の一部を抜粋、再編集したものです。

 第一戦、第二戦と連勝した。第三戦こそ落としたものの、第四戦は川崎憲次郎の圧倒的なピッチングで勝利し、三勝一敗と大手をかけた。

 しかし、西武は王者の底力を見せて第五戦、第六戦と連勝して逆王手とした。

黄色いパンツか、ピンクのパンツか……

 さまざまなゲン担ぎを行ってきた野村克也は、当然この日本シリーズでも沙知代夫人が懇意にしている占い師のアドバイスを積極的に取り入れていた。

「監督というのはどんなに準備をして、どんなに策をめぐらせても不安は消えないものなんだね。ゲンを担ぐことで、少しでもその不安が取り除かれるのならすがりたくなるものなんです。もちろん、それだけで勝てるなんて思っていないけど。……えぇ、もちろん93年の日本シリーズでもゲンを担ぎましたよ」

 占い師によれば、この年の野村のラッキーカラーは黄色とピンクだという。

 野村はそのアドバイスを忠実に実行した。

 第一戦を迎える際に黄色いパンツを穿いた。初戦、第二戦と立て続けに勝利したのでパンツは穿き替えなかった。第三戦を落としたことで、第四戦は新しい黄色のパンツで臨んだ。ここでも勝利したので、そのまま第五戦に挑んだものの鈴木健の満塁弾に沈んだ。再び黄色いパンツを新調したが、その効果もなく第六戦も敗れた。

 こうして迎えた第七戦。野村は今シリーズ初となるピンクのパンツを穿いた。

 ここまで、三枚の黄色いパンツで三勝三敗だった。泣いても笑っても、これが最後の試合だ。野村は四枚目の黄色いパンツではなく、初めてとなるピンクのパンツを選択した。

 これがはたして、どんな効果を生み出すのか?

 野村にとって初めてとなる日本一を懸けた一日が始まろうとしていた。

【次ページ】 「ヤクルトは脂が乗り切っている」森祇晶が漏らした本音

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