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筒香が2年前に問いかけた…少年野球、母親たちの「お茶当番」問題は改善されたのか? ある監督のため息「チームが託児所代わりになった」 

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沼澤典史

沼澤典史Norifumi Numazawa

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photograph byGetty Images

posted2021/11/27 11:02

筒香が2年前に問いかけた…少年野球、母親たちの「お茶当番」問題は改善されたのか? ある監督のため息「チームが託児所代わりになった」<Number Web> photograph by Getty Images

小学生の軟式野球プレイヤーは減少の一途だという。その一因として注目されているのが、少年野球チーム内の「お茶当番」だ

“お茶当番”を作らざるを得ない現実

 だが、「年中夢球」のペンネームで少年野球のチーム作りについての執筆・講演活動を行っている本間一平氏(52歳)は、単純な「当番=悪玉論」と距離を置く。本間氏は、小学一年生の長男が学童野球デビューした際にコーチとしてチームに参加し、以来、学童野球の監督やリトルチームのコーチをおよそ20年にわたって務めた現場経験をもとにこう語る。

「子どもたちの自立を促す観点から、自分でできることはなんでもやらせるべきです。自分が飲むものは自分で家から持ってくる。それが足りなくなったらジャグでお茶を作って飲む。子どもがそうしてるんですから、大人である監督やコーチも当然、自分の飲み物は自分で用意する。そう考えると、保護者によるお茶当番なんてまったく要らないですよね。ただ、当番のもうひとつの機能については、話は別です」

 本間氏は、全国各地のチームを見て回っているが、過疎部では当番を作らざるを得ない現実があるという。

「当番は、いざというときの救護役も兼ねているんです。例えば、監督ひとりだけで練習を見ているチームで子どもが怪我をした場合、病院に連れて行くのは誰ですか。そのとき残された子どもの面倒を見る人は誰ですか。都会でしたら、ある程度コーチ陣がそろっているチームもあるでしょうけど、過疎部では、農業やお店をやっているような家庭が多く、土曜日にチームを見に来られる指導者が少ない。だから、当番制にして保護者をグランドに呼ばないと回らない。昨今の少年野球ではお茶当番をなくそうという動きが盛んですが、各チ-ムの状況によって異なります。お茶当番という意味での当番は必要性を感じませんが、こういうチームさんは救護的な役割で当番を作らざるをえない場合もあると思います」

ある監督は「チームが託児所代わりになった」

 指導者がひとりしかいないチームで、時代の流れに乗って保護者の当番制をなくせば、現場は悲惨だ。

「練習や試合に親が誰も来なくなり、『さながらチームが託児所代わりになった』と嘆く監督がいました。特に小学校低学年だと、野球そっちのけで遊び始めますから、監督ひとりで大勢の子どもを相手にするのは本当に大変なこと。私が選手の親だったら、当番制なんてなくても、お手伝いしにグラウンドに行きますけど、そういう家庭はもはや少数派なのかもしれません」

 各家庭に事情はあろうが、自分の子どもが参加しているチームの優先順位がそんなに低いならば、悲しいことだ。そもそもチーム運営において、保護者はお客さんではなく当事者と言えなくもない。

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