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「フィニッシュは酷かった」「欠けているのはフィジカルの強さ」オマーン戦を見たトルシエが総括する、W杯最終予選突破への最後の課題
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/11/22 17:04
予選を通じて、一貫して得点力不足については手厳しいトルシエ。言葉を選びながらも打開策を語った
「だから解決策はコレクティブに頼るしかない。ここまでを見る限り、苦笑するほかはないが……」
――これからの試合でも、そこは勝負を分ける鍵になるのでしょうか?
「その通りだ。ただ、日本は報われたのは間違いない。攻撃のイニシアチブを握ったのは強調すべきだし、積極的に前に行こうとする意志も感じられた。ペナルティエリアでも存在感を示した。サイドバックも積極的に攻撃をサポートした。守備は強固で頭脳的だった。攻撃の起点にもなっていた。コレクティブに戦ったことで得た勝利だった。連帯感も申し分なかったが、あれだけ攻撃でいろいろやりながら、本当の得点機会はほとんど作り出せなかったのは批判すべき点だ。つまり軽いからで、日本の攻撃は軽火器ばかりだった。大口径の大砲は日本にはなかった」
――バズーカではなくピストルばかりだったということですね。
「ピストルはたくさんあっても大砲はなかった。これは選手の問題で、戦術がどうのではない。戦術面では選手たちは十分によくやったしボールも支配した。攻撃もよく仕掛けた。だがピストルばかりでカノン砲がいない。相手を一撃で仕留められる武器が必要だ」
日本に欠けていたのはゴール前のフィジカルの強さ
――しかし日本国内はもちろん、海外組を見渡してもそういう選手はいません。そこが大きな問題で……。
「大柄な黒人選手がいるだろう。彼は今どこにいるのか?」
――誰でしょうか。黒人のフォワードは何人かいますが。
「私のチーム(ベトナムU19代表)がその黒人フォワードと対戦している。長身の選手だ」
――櫻川ソロモンです。ジェフにいますが、A代表には入っていません。
「彼にはとてもいい印象を持った。フィジカルの強さがある。
日本に欠けていたのはゴール前でのフィジカルの強さだ。ゴール前で孤立したときに、頭や足でうまくコントロールできないからボールを収められない。空中戦も挑めない。常にピッチ上のプレーを強いられ、そこで行き詰ったときには空中戦を仕掛けることも必要だ。しかし日本にその武器はない。プレースタイルを変えられないから、常に足元で勝負しなければならない。だがときに空中での戦いも必要だ。FKやCKなどのセットプレーにおいて、日本はそこが弱いと言わざるを得ない。前線に屈強な選手がいれば、日本はさらに高い位置でプレーすることができるようになる」