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「『仲良しチーム』になっちゃダメ」ホークス松田宣浩がベンチで感じた“違和感”…藤本新政権の来季は「悪あがきしたっていいでしょ!」 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byIchisei Hiramatsu

posted2021/11/24 11:03

「『仲良しチーム』になっちゃダメ」ホークス松田宣浩がベンチで感じた“違和感”…藤本新政権の来季は「悪あがきしたっていいでしょ!」<Number Web> photograph by Ichisei Hiramatsu

今年38歳を迎えたソフトバンク松田宣浩に、藤本博史新監督のもと“復権”を期す来季の意気込みを語ってもらった

 当時のソフトバンクは、「常勝軍団」であると同時に「個性派集団」でもあったのだ。その視点から論ずれば、近年の生え抜きの若手選手はどこか迫力に欠ける。

 うん、そうかもね。松田が同調する。言葉を選ぶように、ベテランとしての見地から今のチーム事情を紐解く。

「15年あたりは個性が強かったですよね。一匹狼の集まりというか。今もチームメート同士、仲はいいんですよ。でも、野球が仕事である以上は『仲良しチーム』になっちゃダメなんです。そこが足りないところかな」

「負けたこともいい教材になることだってある」

 松田がチームの雰囲気を「ぬるい」と断ずるのは、あるいは勝ちすぎたことも原因としてあるのかもしれない。

 言うなれば、ハングリー精神の欠如だ。

 08年の最下位と13年の4位。この2年の屈辱を経験している主要な野手は、松田と明石の2人しかいない。工藤公康が監督になった15年からとなると、ソフトバンクは3度のパ・リーグ制覇、17年から4年連続で日本一(15年を合わせて全5回)。Bクラスは今年が初めてだった。

 王朝を築いてしまったが故に、求められる基準値が高くなる。「育成のソフトバンク」の評価は、若手にとって重圧となりうるし、ゲームでは個性を発揮することより、ミスを最小限に抑えようとして萎縮しかねない。それが、松田の言う「ぬるさ」「嬉しそうにプレーしていない」の答えだとしたら合点がいく。

 ああ、そうっすね。松田が首肯する。

「僕らは勝てない年を知っているし、そこから勝てた喜びも知っているし、ずっと勝ち続けていた時期も知っている。でも今の若手、今年5年目の選手って日本一しか知らなかったわけでしょ。こんなありがたいことはないんですけど、負けたこともいい教材になることだってあるんです。それが今年。彼らは秋季キャンプで、『ここまで練習せぇへんと勝てないんだ』って痛感しているはずなんです。そういった意味ではね、ちょっと悪い表現になるけど、今後のホークスにとってはいい1年になったんじゃないですかね」

松田が語る藤本新監督の“指導スタイル”

 松田が言葉に込めた厳しさは本物だ。監督が工藤から藤本博史に代わったことは、ソフトバンクが生まれ変わる大きなチャンスでもある。

【次ページ】 来季は「出られるならどこでも出たい」

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