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伊藤智仁コーチが人差し指を1本“立てざるを得なかった”ワケ…ヤクルト高橋奎二がオリックスを完封できた《4つのポイント》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/11/22 12:37
初の完封を日本シリーズで達成したヤクルト高橋
簡単そうに見えたが、捕球してから反転して素早く送球するまでの動きは、体幹の強さを見せた山田ならではプレーだった。
投手の好投の影には必ず、こういうバックの堅守がある。投手を盛り立てたバックの力が2つ目のポイントだった。
【ポイント3:勝ちパターン崩壊】
「昨日の負け方がちょっと気になったものですから、今日は切り替えて、また新しいゲームを選手みんながしっかりいい形で入ってくれました」
試合後の高津臣吾監督は前日のサヨナラ負けのショックをどう払拭して、気持ちを切り替えてこの試合に臨ませるかに腐心したことをこう語っていた。
試合前の練習では、第1戦で打ち込まれた守護神のスコット・マクガフ投手に歩み寄って、声をかけて精神面のケアもしている。ただ第1戦ではマクガフだけではなく、セットアッパーの清水昇投手も8回に2死から安打と四球で一、二塁のピンチを招いた。結果的には失点こそしなかったが、それでも1イニングを抑えるのに32球を要する苦しい投球を強いられている。
要は前日にリードしている試合を逃げ込む勝ちパターンが、いきなり完全に崩壊してしまったのである。特にこの日の試合に限っては、同点や僅差の展開でこの2人を投入するのは、かなり勇気がいる。現実的に登板させれば危険度も高かったはずである。となると中継ぎの今野龍太投手や金久保優斗投手、左の田口麗斗投手らで繋いでクローザー経験のある石山泰稚投手を使うという選択もあるが、それもまたシリーズという舞台を考えればかなり勇気のいる継投になる。
そういうリリーフ陣の背景から、まずは高橋に「行けるところまでいけ」というのが与えられたテーマだった。その「行けるところまでいかせる」という意識が、結果的には首脳陣にシーズン中にもなかった完投という選択を生むことにつながった。