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伊藤智仁コーチが人差し指を1本“立てざるを得なかった”ワケ…ヤクルト高橋奎二がオリックスを完封できた《4つのポイント》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/11/22 12:37
初の完封を日本シリーズで達成したヤクルト高橋
高橋もまたシーズンで25失点中、初回が6失点と立ち上がりが難しい投手である。この日も1回は1死から2番の宗佑磨内野手に真っ直ぐを中前に弾き返されて走者を許した。そして3番の吉田を二飛に打ち取った2死。4番・杉本裕太郎外野手の打席で一塁走者の宗を巧みな牽制で一、二塁間に挟んでピンチを切り抜けた。
あまり注目はされていないが、実は高橋は12球団でもかなり牽制の上手い投手の1人に入る。右足を小さく、しかし勢いよく一塁方向に蹴るように踏み出す速い牽制は、走者にとってはタイミングがとらえにくく、シーズン中も何度もピンチを切り抜けてきた。
この場面は2死でカウントも2ボール2ストライク。おそらくオリックスベンチからは盗塁のサインが出ていたのだろう。前がかりになっていた走者の宗を見事にその速い牽制の網にかけることに成功して立ち上がりを無失点で切り抜けた。結果的に杉本にはこの日2安打を浴びてタイミングが合っていた。そのことを考えても、苦手な初回を切り抜けたこの技が、完封劇への最初のポイントとなった。
【ポイント2:鉄壁の二遊間】
バックの堅守も光った。
序盤は毎回、走者を背負う苦しい投球だったが、その中で特に大きかったのは2回の西浦直亨内野手のファインプレーだ。
無死一塁から5番のランヘル・ラベロ外野手が放った二遊間へのゴロ。センターへ抜けそうなその当たりに、遊撃を守る西浦が二塁ベース後方で追いつき好捕。倒れ込みながらベースカバーに入った二塁手の山田哲人内野手にバックトスで送球してダブルプレーを成立させた。
この西浦だけではなく、この試合のヤクルトは守りが鉄壁だった。5回には1死一塁から中前への浅い飛球を塩見泰隆外野手が前進して好捕。7回には二塁を守る山田も守備で魅せた。
1死から左打者のスティーブン・モヤ内野手に対して右寄りに守備位置をシフトしていたが、中前に抜けようかという当たりを逆シングルで体を伸ばして捕球。そこから小刻みなステップですかさず反転して一塁に送球してアウトをとっている。