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伊藤智仁コーチが人差し指を1本“立てざるを得なかった”ワケ…ヤクルト高橋奎二がオリックスを完封できた《4つのポイント》
posted2021/11/22 12:37
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
人差し指が1本、待っていた。
8回、自己最多の122球を投げ終えて戻った三塁側ベンチ。ヤクルト先発の高橋奎二投手を待っていたのは、伊藤智仁投手コーチが立てたこの1本の人差し指だった。
「あと1回、行ってくれ!」
指令に左腕は大きく頷いた。
向かった9回のマウンドは3番・吉田正尚外野手から3人で完璧に抑えた。最後の打者となった代打のアダム・ジョーンズ外野手をカーブで空振り三振に仕留めると、クルッと回転しながら左足を蹴り上げて小さくガッツポーズを決めた。
「気合いで投げました。昨日はサヨナラで負けてしまったので、今日は絶対にやり返すぞという気持ちを持っていた。その結果、9回を抑えられたので良かったです」
今年になってブレークしたサウスポーは、シーズン中も最長の登板イニングは7回まででしかない。完封はもちろん、完投すらもやったことはなかったが、その大仕事を日本シリーズの大舞台でやってのけたのだ。9回、133球を投げて許した安打は5本。与えた四球もわずかに2個で5奪三振という文句のつけようのない内容だったが、この完封劇の背景には4つのポイントが隠されている。
【ポイント1:立ち上がりの牽制死】
多くの先発投手がまず苦労するのは、その日ピッチングの感覚がまだ完全につかめていない1回をどう乗り切るかということだ。