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「カープの伝統を引き継ぎたい」大投手・黒田博樹の魂の後継者、大瀬良大地が事実上の“生涯カープ宣言”
posted2021/11/22 17:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PHOTO
事実上の、生涯カープ宣言だった。
11月18日、ユニホーム姿の大瀬良大地は、マツダスタジアムで今季取得したFA権を行使せずに広島に残留することを発表した。
大瀬良らしい理由で、速さで、決断を下した。テレビインタビューでまず、こう答えた。
「1番っていうのは決められないんですけど、理由も数えきれないぐらいたくさんある中で、すべてが1番かなと思う。その中であえて理由の1つを挙げるとすれば、僕がドラフトにかけてもらって、その時にカープが必要だということで指名していただいたこと。そして競合で抽選という形になったんですけど、(担当スカウト田村)恵さんが交渉権確定のくじを引いてくれた。そこからたくさんのご縁に恵まれて、今までやってこれた」
3球団が競合した13年ドラフトから、広島との縁はつながった。
挫折や失敗時にはチームメートに支えられ、励まされ、立ち上がってきた。3連覇した喜びも、チームの力になれずに流した涙もある。
いつしか「僕のモチベーションは、常にチームのために行動すること」と、考えるようになった。
身近にいた「理想のエース」の影響
理想のエースである、黒田博樹氏の影響が強い。勝利に対する執念、マウンドでの闘志、行動でチームを鼓舞。それでいて、温かい。今季はマウンドでの立ち居振る舞いや所作を過去の映像を見て真似た。
「カープで学んだことはカープでつないでいくという思いが強かった。見てきた背中は大きくて、遠いところにはあるんですけど、考え方とかはたくさん学んできた」
入団時から育んだチームへの愛情と愛着、そして献身。そこに常に持ち続けた感謝の気持ちと、新たにエースとしての責任感も加わった。自分のことよりも、チームのために投げられる球団は、ひとつしかなかった。
「頑張ってつかんだ権利なので考えることもありましたし、悩むこともありました。それでもやっぱり考えれば考えるほど、やっぱりカープに対する愛着だったり、そういったものがどんどん強くなってきた」
大瀬良のプロ野球人生を振り返ると、挫折とケガが何度も行く手を阻んできた。1年目に2桁勝利を挙げ、新人王を獲得したが、翌年は勝ち運に恵まれず中継ぎに配置転換。勝ちパターン入りして、10試合のイニングまたぎもこなした。慣れないポジションでのフル回転した代償は大きく、翌16年に右肘を痛め、大きくシーズンに出遅れた。