箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「厚底シューズは“諸刃の剣”なんです」箱根駅伝有力校のエースが次々に故障のナゾ…選手を襲う“意外な落とし穴”
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2021/11/21 17:02
全日本駅伝では箱根駅伝有力校のエース級が相次いで怪我による出場辞退を余儀なくされた。その背景には、今やランナーの必需品となった「厚底シューズ」があった?
“ナイキ厚底シューズ着用”大迫傑はなぜ怪我しない?
ナイキ厚底シューズはこれまでにないモデルのため、最初は戸惑う選手が多い。大迫傑は初めて『ズーム ヴェイパーフライ 4%』を履いたときの感触をこう振り返っている。
「本当にびっくりしましたね。ふかふかでクッションがあるんだけど、反発もある。こんなシューズは初めてでした。これだけ地面からの反発力をもらって走ることはなかなかないので、これでマラソンを走れるのかなと思いましたね」
大迫はナイキ厚底シューズを着用して、ボストン(2時間10分28秒)、福岡国際(2時間7分19秒)、シカゴ(2時間5分50秒)とタイムを短縮。MGCは3位に終わったが、昨年3月の東京では二度目の日本記録(当時)となる2時間5分29秒をマークした。そして、今夏の東京五輪でも6位入賞の快挙を成し遂げている。
意外かもしれないが、大迫はトレーニングでナイキ厚底シューズを履くことは少なかったという。
「東京五輪前のトレーニングでいうとジョグは『エア ズーム ペガサス』で、少し速いロングランの時は『エア ズーム テンポ ネクスト%』。ハードなスピード練習のときは、前半はテンポなどトレーニング用のシューズを履いて、後半に『ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 2』や『エア ズーム アルファフライ ネクスト%』を履いていましたね」
そして大迫は故障をほとんどしていない。日本人で最初にナイキ厚底シューズを着用して、誰よりも結果を残してきたランナーの取り組みにヒントがあるような気がしている。
どんなに優れたアイテムでも欠点はある
ただ履けば速くなるという便利なものはない。どんなに優れたアイテムでも、欠点はある。走るのは人間で、シューズは個々のポテンシャルを引き出してくれるもの。ギアに振り回されることなく、まずは「素」の自分が速く、強くなることを第一に考えないといけないのではないだろうか。
厚底シューズの登場で世界のレースは変わった。その流れに食らいついていくためにも、最新ギアの使い方には注意が必要なようだ。