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「厚底シューズは“諸刃の剣”なんです」箱根駅伝有力校のエースが次々に故障のナゾ…選手を襲う“意外な落とし穴” 

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byNanae Suzuki

posted2021/11/21 17:02

「厚底シューズは“諸刃の剣”なんです」箱根駅伝有力校のエースが次々に故障のナゾ…選手を襲う“意外な落とし穴”<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

全日本駅伝では箱根駅伝有力校のエース級が相次いで怪我による出場辞退を余儀なくされた。その背景には、今やランナーの必需品となった「厚底シューズ」があった?

 当時のモデルは『ズーム ヴェイパーフライ 4%』。2018年2月の東京マラソンで設楽悠太(Honda)が2時間6分11秒の日本記録(当時)を樹立したことで一躍注目を浴びた。しかし、設楽はレース中に右ふくらはぎに痛みを感じており、後日、病院で「脛骨の疲労骨折」と診断されている。

 その後、大迫傑と鈴木健吾(富士通)がマラソンの日本記録を打ち立てるなど、ナイキ厚底シューズは様々な記録を塗り替えていく。駅伝でも年々、ナイキ厚底シューズを履く選手が増加。他メーカーも厚底タイプを登場させるようになり、5年前と選手の足元は大きく様変わりした。

 目視データになるが、今回の全日本大学駅伝は出場全216人中177人(81.9%)がナイキ厚底シューズ(『エア ズーム アルファフライ ネクスト%』or『ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%  2』)を着用していた。他のメーカーを履いていた選手もほとんどがプレート入りの厚底タイプだった。

 ナイキ厚底シューズは反発力のあるカーボンファイバープレートを、エネルギーリターンの高い特殊素材で挟んでいる。弾むように進む感触が特徴で、着地時の衝撃も和らげてくれる“魔法のシューズ”だ。着地時にかかるダメージは薄底と比べて、かなり小さい。しかし、故障者が続出しているという“想定外の現象”が起きているのだ。

厚底シューズは“諸刃の剣”「練習内容によって変えるべき」

 B監督は厚底シューズを「諸刃の剣」と表現した。

「厚底シューズが出てきてタイムはものすごく伸びましたし、選手も自信をつけています。ただ、あのシューズを頻繁に履いていると、股関節周りや仙腸関節周りのケガ(疲労骨折など)が増えるように感じています。そのため厚底シューズの使用方法を考えるようになりました」

 B監督のチームはナイキ厚底シューズを比較的早くから活用していることもあり、他の大学よりも一歩進んでいる。

「練習内容によって厚底シューズを履いていいものと、履かないものに分けています。楽に進むシューズですので、走るために必要な筋肉が落ちてしまう危険もあると考えています。1年ほど前からは、股関節周りや仙腸関節周りを強化するようなトレーニングを入れるようになり、今年はその箇所の故障が減りました。便利なものは何でもそうですけど、人間の使い方次第なんじゃないかなと思いますね」

 男子マラソンの世界記録保持者で東京五輪でも金メダルを獲得したエリウド・キプチョゲ(ケニア)にも以前シューズについての話を聞いたことがある。

 キプチョゲは標高2100mのエルドレットでトレーニングを積んでおり、アスファルトの練習は月に1回程度。路面が硬いところではほとんど走らないという。もっとも走る時期で走行距離は1週間で200~250kmだ。週に2回は室内で約2時間のワークアウトもこなす。スピード練習は厚底レーシングシューズを使用しているが、他の練習は別のモデルを3種類ほど使い分けていた。

【次ページ】 “ナイキ厚底シューズ着用”大迫傑はなぜ怪我しない?

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