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ネイマールは「12歳でレアル勧誘」、ロナウジーニョはどう育った? 王国ブラジル《幼少期の黄金ルートと壮絶な競争原理》とは
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/11/14 17:01
2011年クラブW杯でのネイマールvs酒井宏樹。稀代のドリブラーを育てたブラジルの育成とはどうなっているのか
「フットサルとフットボールとではコート/ピッチのサイズ、ボールの重さとサイズ、スライディングタックルやフィジカルコンタクトが認められるかどうかといった基本的なルールなどが異なる。あまり遅くまでフットサルをやると、フットボール選手として必要な技能を身に付けるのに障害となりかねない」
13歳前後からは、フットボール選手としてのテクニックとスキルを身に付け、戦術を教わり、フィジカル能力も高めていく。
10代にして《数年は立場が安泰にしない》競争原理
アカデミーの中核は、U-15、U-17、U-20のカテゴリー。20歳が、プロになるための一般的な年齢制限となる。
ただし、これらのカテゴリーに一度入ったら次のカテゴリーに上がる2、3年は立場が安泰、というわけではない。ここが大きく日本と違う点なのではないか。
強豪クラブのアカデミーでは常に鵜の目鷹の目で優秀な選手を探しており、国内各地で行なわれる年齢別の大会を視察する。全土にいる協力者からも、情報が寄せられる。彼らが推薦した選手をアカデミーが獲得すれば、クラブから報酬が支払われる仕組みだ。
スカウトは「面白い選手がいるよ」といった情報が入れば現地へ行って自分の目で確認し、「これは才能がありそうだ」と思えばクラブへ連れてきて、一定期間、そのカテゴリーのチームの練習に参加させて観察する。すでにいる同ポジションの選手より優秀と判断すれば、正式に入団させる。家がクラブから遠ければ、選手寮に入れ、学校にも通わせる。
この場合、アカデミーの各カテゴリーには定員があるので、同じポジションの選手が退団させられることが多い。
プロ選手なら契約があるので、もし契約期間中に解雇されても契約満了までの給料を受け取る権利がある。しかし、まだプロ契約をしていないアカデミーの選手の場合、いつ退団させられても何の補償もない。彼らは、ある意味ではプロ選手よりも厳しい状況に置かれ、日々、激烈な競争をしながら、プロ選手を目指して必死に練習に励むのである。
ネイマールは12歳でレアル・マドリーに
強豪クラブのアカデミーの優秀な選手には、10代前半から代理人が付く。たとえば、ネイマールには12歳で国内有数の代理人が付き、自分のコネクションでレアル・マドリーのU-13の練習に参加させた。