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部活的な「中学・高校3年ずつで育成」は世界的に見て非効率? ブラジル在住記者の《日本サッカー停滞打破》大胆提言
posted2021/11/14 17:03
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Jamie McDonald-FIFA/Getty Images
そもそも、日本と南米とではフットボールに対する考え方が大きく異なるのではないか。
ブラジルでは、フットボールは「子供の頃からの大好きな遊び」の延長線上にある。名門サントスのアカデミーでエリート教育を受け、欧州のメガクラブで嬉々としてプレーしてブラジル代表のエースにまで登りつめたネイマールの原点は、子供時代にボールを蹴る楽しさを知り、熱中したことにある。彼のモットーは「大胆にプレーして、歓喜を味わう」というものだ。
プロ選手を目指す子供の多くが貧困家庭の出身だが、プロクラブのアカデミーでは月謝がなく、用具も支給されることが多い。そのため、両親にとっての金銭的負担はほとんどない。アカデミーでの練習は量より質を重視しており、かつての日本のように理不尽で非生産的な長時間練習を強いられることはない。
アカデミーでの激烈な競争を勝ち抜いてプロになっても、子供時代と同様、皆がフットボールが大好きであることに変わりはない。仕事も趣味もフットボールで、試合や練習が終わってから自宅近くの広場で仲間とボールを蹴って楽しむプロ選手が少なくない。
ボールを蹴る楽しさより“耐え忍ぶ習慣”の状況では
日本でも子供たちはボールを蹴る楽しさを知り、学校のチームなり育成専門のクラブ(いわゆる街クラブ)なりプロクラブのアカデミーに入って、本格的に練習を始める。
しかし、いずれの場合も親はかなりの金銭的負担を強いられる。プロクラブのアカデミーや街クラブでは「習い事」として、学校のチームでは「教育の一環としての部活動」と捉えられるのが普通だろう。
このような事情から――非効率で意味のない長時間練習を強いられた場合でも、選手が耐え忍ぶ習慣が生まれ、それが今も一部で続いているのではないか。
日本代表中心メンバーの育成経歴を見てみると
また、Jクラブのアカデミーも学校のチームも、それぞれに問題を抱えている。現在の日本代表の中心メンバー19人が育成された組織を調べてみた。
Jクラブ:冨安健洋、吉田麻也、遠藤航、酒井宏樹、南野拓実、田中碧、堂安律、権田修一、原口元気(9人)
高校→大学:長友佑都、守田英正、伊東純也、古橋亨梧(4人)
高校:大迫勇也、柴崎岳、浅野拓磨(3人)
Jクラブ→高校:鎌田大地(1人)
Jクラブ→大学:三笘薫(1人)
海外クラブ→Jクラブ:久保建英(1人)