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《大学ラグビー》帝京のスクラムに完全制圧された早稲田…でも、なぜかスコアは「7点差」“1年目”大田尾監督が試した素の力
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySankei Shimbun
posted2021/11/05 11:01
スクラムで早稲田大を制圧した帝京大。歓喜の瞬間、喜びを爆発させていた
最初のトライは、13番の岡崎颯馬の突破から、小林、そして1年生SHの宮尾昌典が相手を振り切った。宮尾はこれが今季5トライ目で、チャンスに絡む能力が高い(この日はディフェンスでも勘どころの良さ、体の強さを見せた)。
また、爆発的なスピードを持つ14番、槇瑛人、そしてFB河瀬諒介の鋭いステップ、ランは、見る者を陶然とさせる力を持っている。特に河瀬は、飛び出しの速い帝京ディフェンスに対して、引きつけてから「クイッ」という感じでステップを踏むだけでなく、体も強靭だ。
これだけの武器を揃えながら、前半、彼らには活躍の場がなかった。
会見で、キックの多用は首脳陣のプランだったと明かした大田尾監督の言葉の裏には、「前半からもっとボールを動かしていけば、試合展開は違っていたはず」という思いが透けて見えた。
問われる大田尾監督の手腕
大田尾監督は就任1年目。今回、帝京戦に関しては特別な対策を施すわけではなく、素の力でどこまで戦えるかを見ようという意図もあったと思う。
これから早慶戦、早明戦、大学選手権と、指導者として反省、プラン構築、その落とし込みとコーチ陣の技量が問われる時期を迎える。会見での潔い姿勢から、正しい総括が出来れば、このチームには成長の余地が大きいと見る。
ただし、大きな問題はスクラムだ。
スクラムを減らす工夫は出来るが、避けては通れない問題でもある。おそらく、早明戦で明治は、容赦ないプレッシャーをかけてくるだろう。あとひと月の修正力に注目したい。
さて、11月3日の結果を見る限り、帝京が自信をつけ、慶明戦で圧勝した明治が充実ぶりを見せつけた。11月20日の両校の対決は、大一番となる。
そして今回、自縄自縛の罠に嵌った早稲田が、どのような成長曲線を描くのか――大田尾監督の手腕が問われる季節を迎えた。