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「フロンターレは死んでいない」「ポンポン選手を連れてきても…」 小林悠や強化部が語った《1敗だけでJ1連覇》の真相と転機 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byJ.LEAGUE

posted2021/11/04 17:01

「フロンターレは死んでいない」「ポンポン選手を連れてきても…」 小林悠や強化部が語った《1敗だけでJ1連覇》の真相と転機<Number Web> photograph by J.LEAGUE

2度目のJ1連覇を果たした川崎フロンターレ。札幌戦などのターニングポイントを乗り越えての栄冠となった

 崩れるときというのは、チームの中から崩れていくもの。それを自覚していた王者は、ここでクラブの魂を見せていった。

 印象的だったのは、唯一負けた福岡戦翌日の鬼木監督の言葉である。優勝争いに目を向けると、猛追してきた横浜F・マリノスに関する質問も増え、皆が意識せざるを得ない存在になっていた。それでも指揮官は、そのベクトルをライバルではなく自分たちの成長に向け続ける姿勢を一貫し続けた。

「マリノスのことは、自分たちがコントロールできることではないですから。コントロールできる可能性があるのは、自分たちが勝ち続けること。そこでメンタル的な差が出てくると思ってます。このタフなシーズンを勝ちたいし、そこで強くなりたい。それが僕の思いです。そして、これは力をつけるタイミングだと思ってます。簡単ではないですけど、みんなで力をつけていきたい」

「フロンターレは死んでいないというところを」

 そんな指揮官の言葉に、選手たちも結果で応える。敗戦から中2日で迎えた北海道コンサドーレ札幌戦では小林悠がゴールを決めてチームを蘇らせ、「フロンターレは死んでいないというところを見せたかった」と気を吐いた。

「やっぱり苦しい思いを知ってる選手……自分だったり、ノボリ(登里享平)だったり、そういう選手で声を掛けあいながら今日の勝ちに繋げました。引きずらないことが大事だと思っていたので」

 2010年から在籍し、浮き沈みを知る前キャプテンが、王者の魂を奮い立たせていた。

 長くいる選手だけではない。

 シーズン終盤になると、若い選手たちもその成長をチームの結果に還元し始めている。

 そもそも今夏の川崎は、積極的な補強には動かず、ほぼ現有戦力で戦う方向性を選択した。大型補強を敢行するクラブもあった中、川崎が加えたのは三笘と同じ左ウイングのドリブラーであるマルシーニョのみ。これにも、しかるべき理由があった。

「連れてくることが悪いわけでもない。でも」

 竹内弘明強化本部長は「もちろん、連れてくることが悪いわけでもないです。あくまで状況次第ですが」としながらも、「あんまりポンポン連れてきても、それはそれで今いる選手への変なメッセージになってしまう。適正な競争の中で維持したい。なので、今いる選手を第一で考えたいというのはありました」と明かしている。

 我慢の時期も必要になるかもしれないが、既存の戦力を育てながら強くなっていく。それがクラブとしての意思だった。現場の鬼木監督も、そのリクエストに応えた。アウェイロードの続いた夏場や、2度に渡る隔離生活を余儀なくされた時期はチームの舵取りも難しかったはずである。それでも指揮官は揺るがなかった。

【次ページ】 「フロンターレの魂というものを見せることが」

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