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《巨人ドラ1インタビュー》骨折でドラフト戦線“離脱”も「あきらめたくなくて」⋯翁田大勢が語る新フォーム&自己最速157キロの裏側
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph byTakahiro Kikuchi
posted2021/11/04 11:01
今年のドラフト会議で巨人からドラフト1位指名を受けた関西国際大のエース右腕・翁田大勢
「僕は腕が頭から離れてヒジに負担がかかりやすい投げ方だったんです。前までは『腕を強く振ろう』としていたのを、体幹部を使って投げる意識に変えました。今はステップする時に左の股関節に入れる時だけ、そこに力を入れるイメージです」
木に見立てれば、枝を振るのではなく、幹から振る。翁田は「腕が振られる感覚」を手に入れた。すると自然と腕を振る位置が下がっていき、サイドスローに近い位置になっていた。
一方、萩原は翁田の筋力について「体幹部があまり強くない」と見た。高い出力に耐えられるだけの筋力トレーニングが必要だった。
手術をしない決断は吉と出た。早い段階で軽いキャッチボールができるほど回復し、翁田は手応えを深めた。
「これまでは長いイニングを投げたら次の日は体がパキパキだったんですけど、今は疲労感が全然ないんです。いいフォームで投げられて、筋力もついてきている証拠だと思います」
しかし、いくら状態が上向いても、もう一つの障壁がそびえていた。阪神大学野球連盟は新型コロナウイルス感染防止のため、入場規制を敷いていた。そのため、たとえ公式戦であろうとスカウトの入場は禁じられていたのだ。
秋のリーグ戦で見せた“圧巻の投球”
視察してもらえるのはリーグ戦前のオープン戦と練習だけ。しかも故障明けの翁田はオープン戦の登板は1試合のみ、短いイニングに限られた。疲労骨折にもめげなかった翁田だが、アピールできない状況に焦りは募った。
「不安はありました。自分の評価が全然わからないので」
秋のリーグ戦が開幕すると、翁田は見違えるようなパフォーマンスを見せつける。
新フォームも体に馴染み、「腕を強く振る感覚を捨ててから、球速も球質も上がった」と手応えをつかんだ。9月19日の大阪産業大戦では自己最速を4キロも更新する157キロをマークした。
サイドスローに近い角度から腕を振る翁田のストレートには、強いシュート回転がかかる。右打者のインコースに食い込むような球筋で、関西国際大の同僚は「バットが折れる」と翁田との対戦を敬遠するという。このクセ球に高速で落ちるフォークを武器に、奪三振を量産した。翁田は連日、スポーツ紙を賑わせる存在になっていった。