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〈スポーツ界の二大巨頭、どっちが強い?〉FIFA対IOC、仁義なき攻防の歴史…サッカーW杯“2年おき開催案”はどうなるか
text by
小川勝Masaru Ogawa
photograph byGetty Images
posted2021/11/04 11:00
FIFAの「グローバル・ディベロップメント部門」責任者は元アーセナル監督のアーセン・ベンゲル氏だ
そして、96年のアトランタ五輪から、23歳以下のプレーヤーに加えて、年齢制限のないオーバーエイジを最大で3人までという規則になった。IOCの意向であるフル代表ではないものの、FIFAとIOCによるどちらにとっても認めることのできる範囲で、規則をまとめたと言えそうだ。ワールドカップの価値は維持されながら、IOCの意向にはある程度、沿う形になったわけだ。
ワールドカップの驚くべき“財政規模”
FIFAはなぜ、自分たちの考えを通すことができたのかといえば、それは、ワールドカップという財源をもっていて、財政面で、競技団体として独立してやっていけるだけの強さがあるからだ。18年にロシアで開催されたワールドカップでは、大会の総収入に関して、さまざまな報道があったが、ひとつのメドになる金額として5890億円と報じられた。
五輪の収入を見てみると、16年のリオデジャネイロ五輪では、IOCが公開している公式の文書によれば、組織委員会によるスポンサー収入が8億4800万ドル、チケット収入が3億2100万ドル、ライセンシングが3100万ドル、大会のテレビ放映権料が28億6800万ドルだから、合計すると40億4800万ドルになって、1ドルを110円で計算すると4474億8000万円だ。
ただ五輪の収入は、大会時だけでなく、IOCによるスポンサー収入などもあるため、単純に比べることはできないが、単独の競技ながらワールドカップの財政規模は、夏季五輪と同じ程度と見てよさそうだ。
財政面で強いFIFAとしては、ワールドカップを2年に1度にするという提案を、自分たちだけの決定で、なにがなんでも通すというつもりはないはずだ。最初に提案をして、さまざまな組織から出てくる懸念と、議論をすることで、自分たちの望む具体案について、認知してもらうようにするはずだ。IOCは、自分たちと同じ懸念を共有している組織と連携して、提案の問題点を認識するようにFIFAに求めていくはずで、FIFAの具体案に対して、IOCがどういった議論を展開するのかを含めて、注目されるところだ。