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〈スポーツ界の二大巨頭、どっちが強い?〉FIFA対IOC、仁義なき攻防の歴史…サッカーW杯“2年おき開催案”はどうなるか
posted2021/11/04 11:00
text by
小川勝Masaru Ogawa
photograph by
Getty Images
国際サッカー連盟(FIFA)が提案しているワールドカップの隔年開催案については、12月にFIFAとして討議する会合を開くということがすでに報道された。
ワールドカップの隔年開催案は当初、5月にサウジアラビアサッカー連盟から提案されたということだが、元アーセナル監督のアーセン・ベンゲル氏が責任者を務める「グローバル・ディベロップメント部門」が打ち出しているため、FIFAの総意としての提案と考えてよさそうだ。隔年開催にして、ワールドカップの価値が維持されるのであれば、FIFAとしては最大の収益源である大会が、2年ごとに開催されるわけだ。
だが、このFIFAの提案に対して、世界の競技団体をはじめ、関連の組織から懸念の声が出た。サッカー界でも欧州や南米のサッカー連盟から、同意できないという見解が出され、アディダスなどの企業からも、同様の声が上がった。そういった中、ひと際はっきりした懸念の声を上げたのが国際オリンピック委員会(IOC)だ。
“二大巨頭”が歩んできた攻防の歴史
IOCは理事会の声明として、ほかの競技団体をはじめ、世界のサッカークラブ、選手たちが、強い懸念を表明しているとしたうえで、IOCはこれらの懸念を共有していて、クラブや団体がFIFAと協議を求めていることを支持する、というメッセージを出した。2年に1度の開催など、相談もなしに独断で決めないでくれ、というIOCの思いが伝わってくるメッセージだ。
隔年開催になれば、夏季五輪とワールドカップが同じ年に行われることになるので、五輪がこうむる影響はいろいろありそうだ。ワールドカップに出場した選手が、直後の五輪に出場する権利があったとしても、コンディショニングの面から五輪に出場するとは考えにくく、五輪のサッカーの価値は下がってしまうはずだ。
FIFAとIOCは、五輪におけるサッカーの開催をめぐって、長い攻防の歴史を歩んできた。だがほとんどの場合、FIFAが自分たちの見解を通してきたと言えるのだ。FIFAが公認する形で最初にサッカーが五輪で開催されたのは1908年のロンドン五輪だった。当時はアマチュアのプレーヤーしか五輪に出場できなかった中で、すでにサッカーにはプロがいた。