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〈東大野球部→キーエンス内定辞退〉浮かび上がるデータと現実の“ギャップ”⋯それでも齋藤周(21)は「プロ野球アナリスト」を目指す

posted2021/11/03 11:00

 
〈東大野球部→キーエンス内定辞退〉浮かび上がるデータと現実の“ギャップ”⋯それでも齋藤周(21)は「プロ野球アナリスト」を目指す<Number Web> photograph by 東京大学野球部提供

大企業であるキーエンスの内定を辞退し、プロ野球のアナリストの道へ進むことを決めた東大4年・斎藤周

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樫本ゆき

樫本ゆきYuki Kashimoto

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東京大学野球部提供

 最近「アナリスト」という言葉をよく耳にするようになった。辞書には「分析をする人」「評論する人」とある。サッカーやバレーボール、ラグビーの試合中継で、監督の横に座ってパソコンやタブレットを見ながらアドバイスをしている人が映るが、あの人たちが「アナリスト」「アナライザー」と呼ばれる人らしい。

 データとスポーツ。

 野球界に置き換えると、1990年代にヤクルト野村克也監督が「ID野球」を標榜して日本一を3度果たしたことが思い出される。ID野球の精度はそのあと測定器の進歩などで「立体的」に進化し、データを駆使した戦略が当たり前に。NPB、社会人野球でアナライザー(分析係)を置くチームも増えてきた。

「キレ」「打球の伸び」を数値化する

 東京大学野球部も例外ではない。東京六大学リーグの中で唯一リーグ優勝がない同校が、野球強豪校出身の選手たちがひしめくリーグの中で、データの積極活用によって難局を打開しようとしている。

 野球部には127人の選手と、部の運営・会計・事務を担当する9人のマネージャー、練習サポートをする8人の学生コーチがいる。分析は配球、盗塁、打球、(相手の)投球フォームの4部門に細分化し、そのうち打球速度・打球角度の分析を齋藤周(あまね、4年=桜修館中等教育)が行っている。肩書は「学生コーチ兼アナリスト」だ。

 主戦場である神宮球場に「トラックマン」という測定器が設置されたのが19年秋。そこが転機だった。リーグ戦の打球や投球の軌道をレーダーで感知し、人間の目では測れない細部を数値化できるようになった。例えば、投手が投げた球の回転数や回転方向、回転効率、変化量。打球においては、速度、角度、方向など。「キレがある」や「打球の伸び」など、抽象的な言葉でしか表現できなかった世界が、数値によって可視化できるようになった。ここを追い風としてチーム強化に生かそうというのが、東大野球部の目論見だった。

データを入力→“仮想ピッチャー”で練習

 しかし注意点があった。これらのデータを解析するには、専門の会社があることからもわかる通り、難易度が高い。分析と解析は似て非なるもの。解析のデータを妄信して間違った方向に進んでしまう危険性もある。齋藤は土台となるプログラミング言語を習ったり、IT企業のインターンに参加したり、関連の書物を読み漁るなど、解析学を独自で勉強するようになった。「パソコンが苦手でエクセルもできないレベル」(本人談)からの努力、本気度はチームメイトも認めている。

【次ページ】 リーグ最多の盗塁数、2季連続の勝利も…

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