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父が輝いた、あの神宮で…元ヤクルト度会博文の長男・基輝が13年ぶりに戻る“大舞台”「お父さんに似て思いきりが良い」
posted2021/11/11 11:04
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
父が輝いていたグラウンドに、あの日以来ついに戻ることができる。
横浜市長杯(関東地区大学野球選手権大会)に出場していた中央学院大は白鴎大、東海大、神奈川大といった並み居る強豪校を倒して初優勝。11月20日に開幕する明治神宮野球大会に関東五連盟第一代表として出場することが決まった。
古田島成龍、山崎凪というドラフト候補にもなった4年生右腕2人が目立つが、打線にも力のある4年生が揃っている。その中でも「5番・一塁手」の度会基輝(わたらい・もとき)は今大会13打数7安打、打率.538の大活躍で、同校が準優勝した2016年春の全日本大学野球選手権以来の全国大会出場に大きく貢献した。
父はヤクルトで15年にわたってプレーした度会博文さん(東京ヤクルトスワローズアカデミー設立準備室/スワローズジュニア監督)。代打やどこでも守れる守備固めといったスーパーサブ的な役割としてヤクルトの黄金時代を支えた。親しみやすい人柄でもファンに愛され、現役引退発表後の2008年10月12日には真中満らとともに引退試合が行われた。
その試合の始球式で大役を務めたのが当時小学3年生だった基輝だった。捕手役の弟・隆輝(りゅうき/現・ENEOS)に向かって思いきり投げ込みストライク。大歓声を浴びた。その後は、「いつもカッコイイと思って見ていました」と話す父の最後の勇姿を目に焼き付けた。
元部員の不祥事に泣いた高校時代
それから13年の時を経て、基輝も神宮球場に返り咲くことになったが、ここまでの道のりは苦難の連続だった。
船橋ボーイズの小学部で全国大会出場は果たしたものの、船橋ボーイズ(中学部)と拓大紅陵高時代は全国大会出場ならず。特に高校3年夏は主将として甲子園出場を目指していたが、千葉大会直前に元部員の不祥事が発覚。部員全体の連帯性はなく、近年の事例をみても大会への出場は妥当とも思えたが、ネットなどで激しいバッシングが起こり、それは当然、選手の目や耳にも届いていただろう。
渦中のチームで主将を務めた基輝には不祥事に関する質問が容赦なく飛んだが、誠実に対応。プレーでも3回戦までの全試合で、2打点以上を挙げる活躍を見せた。4回戦では、のちに準優勝を果たす習志野に延長11回の末に敗れたものの、試合後の整列まで気丈に振る舞っていた。
だが、その後の取材時には涙が止まらなかった。それでも「もっとチームの役に立てる働きをしたかったです。こんな状況の中で応援してくださったみなさんに感謝したいです。協力してくれた仲間や周りの方々の支えもあってここまで来ることができました」と感謝の言葉を繰り返した。