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夏の連覇が途絶える→「力がない世代」が勝ち取ったセンバツ当確 聖光学院・斎藤監督「勝因と言ったら傲慢かもしれないけど⋯」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2021/10/30 17:02
東北大会で準優勝し、「センバツ当確」の聖光学院。“14連覇”を逃した今夏から「新チーム」はどう立ち上がったのか−−
今夏敗れた3年生を「神宮とセンバツに連れいていく」
7月20日。聖光学院は県大会準々決勝で敗れ、夏の連覇が途絶えた。甲子園に出ていれば新チームの始動は必然的に遅くなるが、今年は7月下旬から再スタートを切れた。何より3年生たちが練習を手伝い、紅白戦で真剣勝負してくれたことも大きかった。先輩たちの献身を受け取った2年生は、「3年生を神宮大会とセンバツに連れていく」と、より結束する。夏に負けた不幸は、新チームにとって財産となったわけだ。
監督の斎藤も認めるほど、新チームの歩みは悪くはない。だからといって、それが秋の勝因に直結したわけではなかった。
守破離。
武道や茶道で師弟関係の段階を示す際に用いられる言葉を引用して、横山が説明する。
「このチームは本当に中身がいいから、指導者の教えを忠実に守ることはできるんだ。でも、自分たちの力で殻を破ることができない。秋に破ってくれるといいんだけど」
今年の秋は当初、夏に控えピッチャーとしてマウンドに立った佐山未來と、正捕手の山浅龍之介が中心のチームと言われてきた。
実際、県大会はバッテリーが踏ん張った。
磐城との初戦。同点の9回裏に無死二塁とサヨナラ負けのピンチを作りながら、山浅の牽制球で難局を凌ぎ、延長10回で辛くも勝利した。次戦以降もスコア以上の緊迫した試合が続き、監督も「1試合でも多く経験させたい」と、謙虚に答えるシーンが目立った。
大会期間中、その斎藤から苦笑交じりに投げかけられた言葉があった。
「弱いべ?」
それは横山が懸念する、殻を破り切れていない現状にやきもきしているようでもあった。
エースの佐山が県大会で全6試合に登板し、防御率0.44と大黒柱の役割を果たした。一方で、チーム打率は2割5分1厘で29得点。強いとは言えないが、弱いとも断定できない。まだ殻を破り切れていなかっただけなのだ。
主将がエースに叩きつけた“挑戦状”
力がない。弱い。指導者からそう厳しくも愛情ある揶揄を向けられるなか、佐山はチームの脱皮、ポテンシャルを信じていた。
新チームが始動してからも夏の敗戦を引きずっていたエースに、「悔しいのはお前だけじゃないんだ」と檄を飛ばし、目覚めさせてくれたのが赤堀だった。さらに支部予選直前の紅白戦で佐山がレギュラーメンバー相手に投げることが決まると、ミーティングで主将から挑戦状を叩きつけられた。