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夏の連覇が途絶える→「力がない世代」が勝ち取ったセンバツ当確 聖光学院・斎藤監督「勝因と言ったら傲慢かもしれないけど⋯」
posted2021/10/30 17:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
「準決勝だったらどうなってたかな? こんな試合になってなかったと思うんだけど」
東北大会終了後、聖光学院の斎藤智也監督が、不満と期待が入り混じった声で漏らした。
花巻東との決勝戦。聖光学院は2点を先取された直後の1回裏に一、三塁のチャンスを作りながら無得点。2回は1死満塁から内野ゴロの間に1点を挙げたが、3回は一、三塁、4回も満塁の絶好機を演出しながら得点には至らず1-4で敗れ、4年ぶりの優勝を逃した。
東北地区のセンバツ一般選考枠は2校のため、甲子園を懸けた準決勝が剣ヶ峰となる。聖光学院はその舞台の青森山田戦で、1-0の6回に一挙4点と集中力を発揮し5-2で勝利した。斎藤からすればこのチームの底力を知るだけに、決勝戦でも圧力を得点に結びつけてほしかったのだろう。
「力がない世代」が“負けグセ”を振り払った
とはいえ、東北準優勝という結果に関しては不満どころか、賞賛を贈っていた。
「県北支部大会から県大会、東北大会の準決勝まで、まさか13連勝するとは思ってなかったかんね。歩みがしっかりしていけば、泥臭く、コツコツ積み上げていけば、こういう結果を得られることもあるんだよね」
聖光学院にとっては、秋、ましてやこのチームが、センバツ出場を手繰り寄せたことに、大きな意味があった。
夏こそ2019年まで13連覇と無類の勝負強さを誇示できていたが、秋は敗戦が続いていた。18年の東北大会出場を最後に19年は県大会初戦でコールド負け。そして、2回戦で敗退した昨秋、斎藤が自嘲的な笑いを作りながら、おもむろに吐いた。
そこには、危機感が漂っていた。
「秋は負けグセがついちまったかな」
この時1年生だったのが、のちに東北準優勝を果たす選手たちである。しかし当時は、指導者たちの評価はあまりに低かった。
力がない世代。
聖光学院は例年、秋の大会が終わると学年別でチームが動く。最上級生の2年生を監督の斎藤が、1年生を部長兼コーチの横山博英が指導する。そして、新入生が入学する春先からAチーム、Bチーム、育成チームで再編成される。1年生は2年生に進級するとBチームに昇格する選手が多く、このカテゴリーで監督も担う横山の薫陶を引き続き受ける。
斎藤が「負けグセ」と発したのと同じ時期、横山も自らを省みていた。