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「ちゃんと卒業したのは3年間で4人」ヤンチャ集団だった高校が決勝戦で大阪桐蔭と対戦するまで…この10年で何が?

posted2021/11/05 11:03

 
「ちゃんと卒業したのは3年間で4人」ヤンチャ集団だった高校が決勝戦で大阪桐蔭と対戦するまで…この10年で何が?<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

左腕・森下を擁する京都国際に勝利し、近畿大会・準決勝進出を喜ぶ和歌山東ナイン。決勝戦では大阪桐蔭に敗れたが、今後の成長が期待できる快進撃だった

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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Sankei Shimbun

「空気、読まんでしょ、ウチって」

 今秋の和歌山大会準決勝で、今夏の甲子園で優勝した智弁和歌山を5-4で下した後、取材対応のための部屋に入ってきた時、和歌山東の米原寿秀監督が、開口一番に発した言葉だ。

 智弁和歌山は、夏の甲子園のレギュラーメンバーで現チームに残ったのは3人とはいえ、この日登板した塩路柊季は準々決勝の石見智翠館戦で先発して6回2安打無失点、武元一輝は最終回にリリーフで投げてストレートが148キロをマークするなど、すでに全国区と言ってもおかしくない戦力が残っていた。

甲子園V智弁和歌山に仕掛けた“奇策”

 だが、和歌山東打線は序盤に先発の武元の速球をうまくとらえ、2回に1点を先制し、3回に2点、5回には1点を加えて4-0とリードしていた。直後の5回裏にすぐに1点を返されると、6回には2点を返され1点差に。2死一、二塁のピンチで1番の清水風太を迎えたところで和歌山東は先発のエースの麻田一誠がレフトへ向かい、左腕の石野涼にスイッチ。清水を空振り三振に斬って取りピンチを脱すると、7回に麻田をマウンドに戻した。

 しかし、7回表に1点を加点して5-3で迎えた直後の裏にも同じようにピンチとなったため、今度は麻田がライトの守備につき、投手を左腕の山田健吾に交代。犠飛を打たれ1点差となったものの、次打者の青山達史で麻田をマウンドに戻すという“奇策”を講じたのだ。

 中盤以降、どちらに流れが転がってもおかしくなかったが、打者のスイングや相性などを見て、小刻みな継投で難敵の打者の目を惑わせ、接戦をものにした。全国制覇帰りの智弁和歌山のその後を見ようとして集まったであろう報道陣が、自嘲的なコメントを発した米原監督に選手へどんな言葉を掛けたのかを尋ねるとこう口にした。

「選手らには“魂の野球”をやろうと言っているんです。気持ちでは負けないでいようと。この言葉は実は昨日思いついたんです」

 その理由は? との問いにこう続けた。

「このチームは成功体験が少ない子ばかりで、自分の気持ちを秘めてしまう子が多い。だから、自分の魂を呼び戻して欲しいなと。怯まない、諦めない、そういう姿勢を出して欲しいと思ったんです」

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