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山本由伸の「おっきい理想」、ラオウ覚醒は“後輩”吉田正尚のおかげ? 混戦パ制したオリックス戦士の言葉《仰木政権以来の日本一へ》
posted2021/10/28 11:04
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
KYODO
<名言1>
しんどくても、何が何でも試合に出すからな。
(中嶋聡/NumberWeb 2021年10月23日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/850334
◇解説◇
25年ぶりにパ・リーグ制覇を達成したオリックス・バファローズ。勝因を挙げればキリがないが、昨季途中から指揮を取る中嶋監督の起用策は、その1つとして挙げられる。
わかりやすい例として、プロ2年目“大型ショート”として期待される紅林弘太郎の抜擢がある。
堂々した打席での立ち姿や面構えに凄みを感じさせる19歳は、9番・ショートで開幕を迎えた。
しかし、序盤は課題が散見し、特に守備では記録に残らない判断ミスも多く、その起用には疑問の声が上がっていた。ほぼ毎試合出場していた5月は本人の表情からも笑顔が消え、「毎日が、地獄みたいな日々でした」と振り返るほどだった。
それでも根気強く紅林を起用したのが中嶋監督だった。
「しんどくても、何が何でも試合に出すからな。結果が出る出ないに関係なく、毎日出ることが大事。毎日出ないとわからないことがある」
紅林は心の中で「マジかよ」と叫んだというが、その期待に応えようと必死に野球に向き合った。
「『無理だよな』って自分の中では思っていたんですけど、監督は、結果や、打ったとか打ってないとかは関係なくて、見ているところが違うんだなと思いました。打てなかったあとの守備とか、声を出すとか、そういうところを見てるのかなと。打ったあとはみんな(守備も)調子がいいと思うんですけど、打てなかった時にどうするか」
試合に出続けることが何かを掴んだのか、徐々に紅林のプレーに安定感が生まれ始めた。セカンドとして二遊間を組むことが増えた安達了一に「あんな肩、僕にはない。すごく楽しみだなと思います」と信頼される存在にまで成長。打席でも粘り強さも生まれ、打率こそ2割台だったが、今季放ったホームランのうち5本を9月に記録している。
最終戦となった25日の楽天戦では、好投を続けるエース山本由伸を援護する貴重なタイムリーで2打点を稼いだ。中嶋監督の“我慢”が実を結んだ。