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山本由伸の「おっきい理想」、ラオウ覚醒は“後輩”吉田正尚のおかげ? 混戦パ制したオリックス戦士の言葉《仰木政権以来の日本一へ》
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKYODO
posted2021/10/28 11:04
ロッテが敗れたことで25年ぶりのリーグ優勝が決まったオリックス。試合はなかったが、京セラドームで中嶋監督の胴上げが行われた
<名言4>
1球1球、大切に。ただ単にやるんじゃなくて、高い意識を持ってやっていきたい。
(吉田正尚/NumberWeb 2021年8月4日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/849217
◇解説◇
打率.339、21本塁打、72打点と今季も数字をしっかりと残している吉田正尚。特筆すべきは、三振数の少なさである(26個)。豪快なスイングを取り上げられることが多いが、その選球眼の良さと振りにいったボールを仕留める確実性が成績にも表れている。
そんな吉田だが、ある金メダリストとの縁が1つの転機となった。
現在、スポーツ庁長官を務める室伏広治氏に、プロ1年目のオフからトレーニングの指導を受けてきた。きっかけは吉田が送ったラブコール。
「(テレビ番組『筋肉番付』を)野球選手も出ていたので興味を持って観たんですけど、そうしたアスリートの中でも室伏さんは、パワーもスピードも、群を抜いて圧倒していた姿が印象的でした」
さまざまなトレーニングを調べるうちに、室伏が編み出した動画を見つけ興味を抱き、手紙を送ったのだという。
「今思えば、よく書いたなーと思いますけど」を笑うが、室伏氏は快諾。身体の使い方だけでなくメンタリティ、自己管理術などあらゆる技術を学んできた。
吉田には大切にしている室伏氏の言葉がある。それは初めて指導を受けた際にもらった色紙に書かれていた「一投一念」。その日の夜、吉田はその色紙をベッドに飾って眠ったそうだ。
1球1球、大切に。その姿勢は今の吉田の打撃術にしっかりと植え付けられている。
仰木彬が開幕直前に伝えたチーム方針
<名言5>
君たちは勝ち負けを一切気にしなくていい。
(仰木彬/Number782号 2011年7月7日発売)
◇解説◇
1994年にオリックス・ブルーウェーブの監督に就任した仰木は、キャンプとオープン戦を通じて一度もミーティングをしなかった。しかし、開幕を控えた前日、選手たちを集めると、きっぱりとチームの方針を伝えた。
『君たちは勝ち負けを一切気にしなくていい。勝ち負けは俺の責任だ。その代わり、試合に出たら自分のベストを尽くせ。俺は良い結果を出した選手は必ず使う。結果を出さない選手は使わない』
就任1年目にイチローをレギュラーに定着させると、その期待に応えるように210本安打の日本新記録(当時)を樹立。シーズン直前に阪神淡路大震災が発生した95年は、2年目の平井正史を抑えの切り札にしてリーグ優勝。96年にはイチローのサヨナラ安打で優勝を決め、シリーズでは巨人を倒して就任3年目で日本一に輝いた。データを重視する冷徹さと、選手の心情を慮る人情派の一面を兼ね備えた名将であった。
あれから25年、「ブルーウェーブ」から「バファローズ」に変わったオリックスはタイトルに見放されてきたが、今季ついに悲願のリーグ優勝を飾った。目指すは日本一の再現。仰木監督もきっとそう願っている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。