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森保監督の《ミスした柴崎岳投入》に思い出す、誹謗中傷されたブラジルの名手… ドゥンガがW杯優勝で「馬鹿野郎!」と叫んだワケ
posted2021/10/16 17:01
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
今月12日に埼玉スタジアムで行なわれた2022年ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第4節オーストラリア戦は、日本代表の森保一監督にとって負ければもちろん、引き分けでも解任かという正念場だった。しかし、進退がかかった状況で開き直ったのか、思い切った采配を見せた。
致命的なミスをした柴崎に向けての意思表示
前節サウジアラビア戦で持ち味を発揮できなかったMF鎌田大地とボランチ柴崎岳の代わりに、ボランチの守田英正と田中碧を先発で起用。システムを4-2-3-1から4-3-3へ変えた。その後も、いつになく早めの選手交代を行なう。
そして1-1で迎えた後半40分、サウジアラビア戦で致命的なパスミスを犯し、それが失点、ひいては敗戦を招いてメディア、ファンから批判の矢面に立たされた柴崎岳を投入した。
チームの浮沈がかかる場面で、その前の試合で大きな失敗をした選手を起用するのは、その選手をよほど信頼していないとできる業ではない。万が一、彼がまたミスをして試合を落とすようなことがあれば、大変なことになっていた。前述した通り森保監督は解任されていただろうし、柴崎の代表でのキャリアもそれで終わっていたかもしれない。
それほどのリスクを負いながらの起用で、「誰が何と言おうと、お前のことを信頼している。俺のチームで、お前は重要な選手なんだ」という強いメッセージを柴崎へ送ると同時に、チーム全体に対して「一度や二度、ミスをしたくらいで、俺は選手を見捨てない」という意思表示をしたのではないか。
投入から1分1秒後のゴールは偶然ではないはず
ピッチに入った柴崎は、普段と変わらぬ落ち着いた表情をしていた。中盤の左サイドに入ってパスを受けると、前方の浅野拓磨へ預けて前へ。浅野からのリターンはインターセプトされたが、積極的な姿勢を見せた。5日前のミスを精神的に引きずっていないことが窺えた。
そして41分、CB吉田麻也からの精度の高いロングパスを左サイドで受けた浅野が見事なトラップでボールを前へ運び、DFを振り切って左足でシュート。GKが左手で弾くと、ファーサイドのゴールポストに当たって跳ね返る。FW伊東純也、CBアジズ・ベヒッチ、FW古橋亨梧の3人が猛然と詰め、ベヒッチが咄嗟にクリアしようとしたがボールは左足に当たってゴールへ。記録はオウンゴールだが、選手たちのがむしゃらなプレーが実って勝ち越した。柴崎の投入から、わずか1分1秒後のことだった。
これは、決して偶然ではないだろう。