欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「《タケフサ=得点力に欠ける》は正しい指摘ではない」マドリー番記者が“ココだけに記す”久保建英への率直な評価
text by
ハビエル・シジェス/ディアリオ・アスJavier Silles/Diario AS
photograph byGetty Images
posted2021/10/17 17:01
レアル・マドリーと対戦した久保建英。その期待値は現地でも大きい
以前は得意ではなかった守備のコンセプトを、久保は要領よく吸収していった。
ポジショニングに注意を払い、ボールが逆サイドに渡った際のスライドの動き、サイドバックへのサポートなどを精力的にこなした。サイドのスペースケアを気にかけ、リトリートをサボることもなくなった。エリートのレベルにおいては、これまで自分の引き出しにはなかった要素も必要になる。そう理解することで、久保は進化の第一歩を踏み出したのだった。
一方、攻撃面の能力について疑いの目が向けられることはほとんどなかった。彼が持つプレービジョン、リズムの変化、運び、抜き去るドリブルのテクニックは、最初の1分から見て取ることができたからだ。ビセンテ・モレノは4-4-2や4-3-3、5-2-3といったシステムを使い分けていたが、久保はほぼ常に右サイドを主戦場とし、それらの能力を発揮していた。
彼は縦方向への推進力を持っているから
カウンタースタイルを確立していたチームにおいて、久保は守備から攻撃に移るトランジションの案内役に適していた。彼のフットボールは縦方向への推進力を持っているからだ。
時に右サイドに開き、時に相手ボランチの背後でライン間のポジショニングを取ってパスを引き出す。そこで最適なプレーを選択することで攻撃を活性化させ、時間とスペースに余裕がない状況では、少ないタッチ数で素早くボールをさばいた。ファーストタッチで違いを作り出すことが多く、マーカーを置き去りにするドリブル突破は味方に数的優位の状況をもたらした。
しかし、それでもラスト数メートルにおけるフィニッシュの精度には疑問符が付けられた。得点力に欠ける選手だという曖昧な評価が向けられたが、恐らくそれは正しい指摘ではない。
久保はスペイン1年目のシーズンに4ゴール4アシストを記録しただけでなく、かわすドリブルの成功数がリーグ8位、被ファウル数が同10位にランクインした。それらは彼がスペインでのデビューシーズンに上々のパフォーマンスを発揮したことを裏付ける数字に他ならない。
ビジャレアルは正しい選択に見えたが……
だがこうした数字以上に特筆すべきことは、彼が自身のスタイルに適した環境とは言い難かったチームにおいて、困難な状況に晒されながらも持てるポテンシャルを発揮してみせたことだ。