箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「私の選考ミスです」箱根駅伝王者・駒澤大が5位…出雲駅伝で“断トツの優勝候補”は何を間違えたのか?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2021/10/12 17:02
優勝候補と目されていた駒澤大学。しかし、出雲駅伝はまさかの5位に終わった
「自分がやるしかない」とギリギリまで突っ込んだ走りで前を追い、5位にまで順位を押し上げた。ラストは、暑さで脱水症状寸前になり、頭が熱くなって、ボーっとしたそうだが、その鬼気迫る走りは、チームメイトへ何かしらのメッセージになったはずだ。
「出雲は、自分たちのチームがベストではない状態で、それでも優勝しようとみんな頑張ってくれたんですけど、暑さに対応しきれていない選手が出てしまい、残念でした。個人的には、2年生に負担がかかっていることに申し訳ないと思っています。秋に自分たちと上の代がどれだけ上がってこられるかを目標にしていましたが、今回は出走メンバーに自分以外に一人も3、4年生が入っていない。そこがうちの課題ですし、出雲で勝てなかった要因の一つだと思います」
4年の佃康平が補欠に入っていたが、最終的に変更しなかったところに2年生と4年生の力と信頼の違いが見て取れる。もし3、4年生で当日のオーダー変更に名前を入れられるぐらいの選手がいれば、田澤で勝負できるレース展開になっていたかもしれない。
ギリギリまで悩んだ編成「4区と5区があまりにもひど過ぎた」
ただ、今回、オーダーの編成について大八木監督は逡巡したようだ。
「3区はともかく、4区と5区があまりにもひど過ぎた。これは私の選考ミスです」
大八木監督が語った選考ミスとは、どういうことなのだろうか。
「唐澤も赤津もトラックでの成績は良かったんです。でも、ロードは違うので、そこでの走りがどうなのか。また駅伝が初めてなので、今後に向けて試したいという狙いもありました。ただ、ここまでの練習の中で調子に不安があったので、どうしようかと迷いもあったんです。それでもうちの主力なので、6kmぐらいなら走れるかなと思ったんですが……難しかったですね。負けたのは、コンディションに不安を残す選手を選んでしまった私の責任です」
ブレーキになった唐澤の調子が戻ってきたのは、本人が話したようにレースの4日前だった。起用するか、どうか難しい判断だが、今シーズンの成長度を考え、さらに全日本、箱根を考えるとここで駅伝を経験させることを優先した。「温情采配」とも言えるが、唐澤や赤津を越える選手は、上級生や下級生に見当たらない。調子が上がらない選手を出場させることで、主力を支える中間層がいない弱さが改めて露呈した感じだ。
また、今回、気温30度という厳しいコンディション下のレースで、駒大の選手のウィークポイントが見えた。優勝した東京国際大の選手たちは個人の持ちタイムや能力では劣るが、愚直に距離を踏み、努力と練習量で個の力を積み重ねてきた。あの暑さや強い風の中、1年生を含め最後までひとりも垂れずに走ったことは、駒大に足りないものを示唆していたのではないだろうか。