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プロレスファンを熱くさせる「10.9」の伝説…朱里が、林下詩美が、そして飯伏幸太が継承した“足4の字固め”
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2021/10/12 11:00
足4の字固めでギブアップを奪った朱里。武藤敬司が高田延彦を仕留めたこの技は「10.9」の象徴だ
林下詩美は「大阪城ホールを恒例行事に」
林下詩美は他団体マーベラスの彩羽匠と、赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)の防衛戦を時間無制限1本勝負で戦った。30分を超える熱戦となったが、最後は得意のハイジャック式のパワーボムで彩羽をフォール。試合後、大阪城ホールでの10.9をこう語った。
「正直、最初に聞いたとき、私は全く事の重大さに気づいていませんでした。26年ぶりの大阪城ホール? 私はまだ生まれてもいないから。そんな前にやった大阪城ホールを久しぶりにやるのが、スターダム。そして、その頂点が林下詩美。メインイベントで最高峰のベルトを賭けて。その重大さにもっと早く気づいた方がよかった。最高の景色でした。これをスターダムの当たり前にしていきたい。何十年ぶりとかじゃなくて、スターダムの大阪城ホールを恒例行事に、この林下詩美がしていきたい」
大会場には似合わない観客数でも、その広い空間が選手に与えるインパクトはまるで違う。これまでにない向上心が湧く。
試合が終わったのは16時45分だった。大会は12時30分に始まった第0試合から数えると、4時間を超える長丁場となった。17時ゴングの新日本プロレスの大阪府立体育会館は「遅刻」になるが、地下鉄でゆっくり行っても、第3試合からのG1クライマックス公式戦には間に合う。
ハシゴする客も多数…スターダムと新日本の相乗効果
1週間前の10月3日は名古屋国際会議場でスターダムが350人。この時は12時開始で14時過ぎに終了。リングアナが規制退場前に「これから愛知県体育館に行く方?」と問いかけると客席から多くの手が挙がった。「結構いますね。時間はたっぷりありますから」と呼びかけていた。
この時、地下鉄の駅に向かうファンのTシャツはロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンが目立った。新日本は16時開始だった。間で食事をとる時間もあった。ロス・インゴのシャツを着たファンに声をかけてみた。
「大阪から来たんですが、ちょうどスターダムもあったので見に来たんです。スターダムいいですね。機会があったら、また見てみたい」
愛知県体育館の新日本の方は2483人だった。
10月9日は試合会場の規模で逆転現象が起きた。スターダムが大阪城ホールで、新日本プロレスが大阪府立体育会館だ。緊急事態宣言は解除されたとはいえ、コロナ禍での制限開催に変わりはない。
後から開催が決まったスターダムがどれだけ観客を入れてくるか、興味が沸いた。スターダムは1441人。新日本は1620人だった。