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「KOの時、パンチを出す前に倒す確信はある?」素朴な疑問に井上尚弥は何と答えたか?《松島幸太朗と同い年スター対談》
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/10/17 11:01
1993年生まれの井上尚弥と松島幸太朗。同年生まれのアスリートには遠藤航(サッカー)、石川佳純(卓球)、吉田正尚(野球)、富樫勇樹(バスケットボール)らがいる
井上 俺、視野がめちゃめちゃ狭いのよ。クルマの免許の教習所で「視野が狭い!」って何回も怒られたから(笑)。これは競技の特性かもしれないけど。
松島 確かにボクシングは目の前の相手しか見ないよね。横向いたらパンチもらっちゃう。職業病だね(笑)。
井上 だからラグビーはすごいと思う。あんな広いところで全員のポジションを把握してるんでしょ? こっちは目の前のものにしか反応できないから。
両競技のトレーニングに共通する“ケツ”の感覚
井上 せっかくの機会だからトレーニングの話も聞きたいと思ってた。ラグビーは素人目にも瞬発力がすごい。幸太朗は自分よりもずっとデカい選手を相手にスピードとフィジカルで勝負している感じがする。フィジカルを強くしてスピードを落とさないって、どんな練習してるのかな? 自分も階級を上げた時に必要なことかなと思って聞いておきたかった。
松島 ラグビーは階級がないから自分の適正な体重を探してる感じ。自分の場合は80㎏くらいの時もあったし、去年は88kgくらいまで増やした時もあった。その時はさすがにちょっと重くて、試合の終盤に本当に疲れると思ったから減らしていった。87、86、85と落として、86、85が一番いいかなって。そこはずっと試行錯誤かな。
井上 トレーニングで意識することは?
松島 どんな練習でも意識しているのはケツ。ケツを使えている時ってけっこういいパフォーマンスができている。だからそこは疲れていても必ずトレーニングするようにしている。チューブを使ったり、器具を使ってスクワットをしたり。
井上 負荷をかける重さはどれくらい?
松島 スクワットは170、180kgくらい。やっぱりボールを持って当たりにいく時もそうだし、細かくステップワークをする時もケツだから、大事なのは。
井上 ケツは分かる。力を出す箇所って足腰と言うけど俺もケツだと思ってる。パンチを打つ力とかキャンバスをグッと踏みつける力とか、感覚としてケツなんだよね。そもそも、なんでケツを意識し始めたの?
松島 自分の場合は足の肉離れを起こしたときに「あれ? ケツ使えてないんじゃない?」と思ったのが大きなきっかけだった。ケガのケアから始まったと思う。
井上 ラグビーって専門のトレーニングコーチがたくさんいるんでしょ?
松島 スピード系とかパワー系に特化したコーチとか、いろいろいる。
井上 ボクシングはそういうところが遅れてるんだよね。だからトレーニングしてるところはぜひ見てみたい。
松島 一緒にトレーニングするのが一番早いかもね。フランス行っちゃうけど。