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「KOの時、パンチを出す前に倒す確信はある?」素朴な疑問に井上尚弥は何と答えたか?《松島幸太朗と同い年スター対談》
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/10/17 11:01
1993年生まれの井上尚弥と松島幸太朗。同年生まれのアスリートには遠藤航(サッカー)、石川佳純(卓球)、吉田正尚(野球)、富樫勇樹(バスケットボール)らがいる
海外で痛感した語学力の大切さ
井上 フランスで1年プレーしてみてどうだった? 言葉の壁とか感じた?
松島 海外から来てる選手はけっこう英語をしゃべってくれるし、そこまで大変じゃない。きついのは病院とかかな。いちいち電話して、これ通訳して、とか。
井上 俺、実は英語勉強し始めたのよ。海外で試合をする時はサポートしてくれるスタッフがいるけど、やっぱり移動とかホテルでの生活とか、英語がまったくできないとストレスになるから。
松島 尚弥はここ2試合がラスベガスだったんだよね。自分も最初に高校を卒業して南アフリカに行った時、リスニングはできたけど自分から伝えることはうまくできなかった。確かにストレスになる。
井上 カネロ(サウル・アルバレス)ってメキシコ人ボクサーのスーパースターがいるんだけど、最初は英語がしゃべれなくて、ある時いきなりしゃべってみんなが驚いた。そこからアメリカでファンが増えたっていう話もある。それは大事だなと思って。幸太朗もフランス語ができたら違うかもね。
松島 そうだね。試合中でも緊迫した状況でフランス語ができると違ってくると思う。
井上 他に、フランスで驚いたことある?
松島 血液を採って練習の管理をしているのには驚いた。疲労が濃いというデータが出たら練習が休みになるとか。
井上 それって逆に、自分的にはめちゃめちゃ疲れていて休みたいのに、血液検査で「問題なし」ってこともあるよね?
松島 全然あるよ(笑)。GPSを使って走る距離も丸わかりだからね。
井上 うわあ、やだなそれ(笑)。ちょっと体験したいとは思うけど、ずっとは続かないかも。自分の場合、最近はあまりムチを入れないようにしてる。極力ケガをしないように仕上げるというか、疲れの抜け方も若いときとは違うから。
松島 20代前半のころはどれだけ走っても筋肉痛くらいだったけど、今はやり過ぎると関節とかに痛みが出たりする。
井上 無茶なトレーニングすると翌朝起きられないとか。
「たぶん倒せる」という感覚を持って打ってる(井上)
松島 あるある。アキレス腱がガッチガチになったり。話変わるけど、ちょっと俺からも聞いていい?
井上 もちろん。
松島 KOする時って、パンチを出す前に「この一撃で倒す」って確信があるの?
井上 「倒そうと思って倒してない」とか、「倒す時はパンチが当たった感覚がない」という選手もいるけど、俺は「たぶん倒せる」という感覚を持って打ってる。急所を狙ってガツンとね。だから「気がついたら相手が倒れてた」というのはないね。こっちも聞きたいこと思い出したわ。幸太朗はなんであんなに視野が広いの?
松島 割と広いし冷静かもね。パニクってる味方の選手を見つけることがよくある。