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ミスしても「今考えても仕方がない」GK谷晃生に聞く、20歳なのにいつも冷静なワケ<東京五輪PK戦は“データより感覚”>
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJMPA
posted2021/10/05 11:02
PK戦の末、ニュージーランドに勝利し、笑顔を見せた谷晃生
「森下さんからは“自分の感情をコントロールしろ。そうすることで絶対にいいパフォーマンスになる”とずっと言われていました。ガンバにいたころは一つのプレーでいら立つこともあったし、(周りの事象によって)自分のパフォーマンスを乱すことが自分の課題でした。だから感情のコントロールのところは日頃のトレーニングから意識するようにしていましたし、それが一定になってきたのはここ最近。ようやく少しずつ形になってきた段階なんです」
むしろ感情のコントロールが利かなかったタイプだった。試合中にミスをしたら引きずってしまっていた。どのように発想を変えていったのか。誰かにアドバイスしてもらったわけでもなく、練習や試合をこなしながら自分のやり方を見つけようとした。
自分のミスで失点すると「テンションが落ちていました」
谷が言葉を続ける。
「それこそガンバU-23で出始めたとき、自分のミスで失点とかするとテンションが落ちていました。どうすべきだったのかを考えてしまう。そこから“今考えても仕方がない。試合終わってからでいいかな”っていうマインドに変わりました。それよりも次のシュートをどう止めるか、どう防ぐかを(考えの)先に持っていっているのが今です」
緊張しないタイプかと思いきや、そんなことはまったくないと苦笑いする。試合前は「ミスするかもな」と不安に襲われる。それは昔も今も一緒だ。ただ無理に負の感情を振り払おうとせず、受け入れたうえで徐々に試合にフォーカスすることで緊張を緩和させていく自分のやり方にたどり着く。
試合前にゴールポストに触ることもその作業の一つ。「試合に臨むまでの過程」を大切にしていくと、己の感情支配をスムーズにできるようになった。
「僕のなかで休むという選択肢はなかったです」
極力、起伏をつくらない。それは安定したパフォーマンスを生むだけでなく、心身の負担をも軽減させている。