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ミスしても「今考えても仕方がない」GK谷晃生に聞く、20歳なのにいつも冷静なワケ<東京五輪PK戦は“データより感覚”>
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJMPA
posted2021/10/05 11:02
PK戦の末、ニュージーランドに勝利し、笑顔を見せた谷晃生
「相手選手の顔と名前が一致しなくて」
「相手選手の顔と名前が一致しなくて覚えられなくて、それに誰が蹴ってくるかも分からないじゃないですか。それが一つともう一つは、データはあくまでデータでしかないと思うんです。もちろん(データは)必要なことで頭に入れておくことも大事なんですけど、それよりも感覚で、まあいけるんじゃないかなって思った。だからそっちを優先したほうがいいんじゃないかなとあの場では感じました」
情報よりも感覚。
ボールを置く前から相手をジロジロと見て、何を考えているか、体の動きを見て、どこに蹴ろうとしているかを探った。助走を短くして打ってきた2人目を止めたシーンはまさに観察と感覚が己を助けた。
単なる幸運でも、一夜の栄光でもない。勢いだけでのし上がってきたシンデレラボーイというわけでもない。これまでの積み重ねが「あの大舞台、あの場面」で活きたのだ。
U-17W杯でのPK戦では1本も止められず
2017年10月、久保建英、中村敬斗らと臨んだU-17ワールドカップではラウンド16でイングランドと、やはりスコアレスのままPK戦となり、1本も止められずに敗れた悔しさがあった。谷も「過去の国際大会で経験があったことは大きかった」と述べる。
彼はこの年のJ3開幕戦(3月12日)、ガンバ大阪U-23の一員として16歳3カ月でJ3デビューを果たしている。だが開幕から4試合連続で先発したものの勝利に恵まれず、その後は出場機会が訪れなかった。デビューから初勝利まで1年以上を費やした。翌2018年5月のアスルクラロ沼津戦でプロ初勝利を挙げると、トップチームでもルヴァンカップで初出場を果たしている。190cmの恵まれた体躯と才覚の片鱗を示しているとはいえ、調子に波のあるGKという印象もあった。
2019年にガンバ大阪U-23の監督に就任した森下仁志からの言葉は、胸に刺さったという。