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「すでに世界が見習うべきモデルだが…」手術明けのトルシエが語った日本の課題<マリノスがブンデスリーガに参加したら?>
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/10/02 11:01
トルシエが日本代表監督に就任したのは98年、43歳のとき。まさに働き盛りの熱量があった
――あなたが述べたように、それぞれの国には国内サッカーと代表チームというふたつの異なるものがあります。日本の国内リーグであるJリーグは、2030年までに世界の5大リーグの中に入るといっています(註:Jリーグが提示した《ビジョン2030》のなかのひとつ。日本型人材育成システムで世界の5大リーグに名を連ねる)。達成できると思いますか?
「それはどのレベルでの話なのか。インフラや組織・機構、セキュリティや芝生、スタジアムのクオリティ、サポーターやメディアへの対応・コミュニケーション、クラブや育成、審判、指導者養成などでは、Jリーグは世界が求めるレベルに完全に達している。世界最高のリーグのひとつであるのは間違いない。すべてを満たしているし、世界一とさえいえるかも知れない。
Jリーグはすでに世界レベルだが…
さまざまな要素を列挙して比べたとき、日本はすでに世界が見習うべきモデルになっていると私は確信している。規律やリスペクトの精神、セキュリティなどにしても、またフェアプレーに関しても、私が思うに日本は世界のNo.1だ。リーグアンではマルセイユ対ニース戦でサポーターが乱入した問題が起こった。日本にはそうした問題は存在しない。その点で日本は世界で最も優れているといえる。
だが世界最高の選手たちをリーグが集められるかという点では――メッシやネイマール、ポグバ、グリーズマンといった選手をJリーグが獲得できるかどうかは、リーグの総合的なクオリティの問題ではない。経済的な問題だ。カタールやサウジアラビアだったら、自国のリーグがメッシやネイマールを獲得できる財力を持っている。
だから日本が世界の5大リーグに入るかどうかは、組織については私はウィと答える。また例えば横浜F・マリノスが、マルセイユやボルドーに代わってリーグアンに参加しても、サッカーに関してはまったく何の問題もない。つまりマリノスが明日にでもリーグアンやブンデスリーガに参加しても、何の問題もないと言い切れる。リーグのレベルに関してはそうだ」 <後編に続く>