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「すでに世界が見習うべきモデルだが…」手術明けのトルシエが語った日本の課題<マリノスがブンデスリーガに参加したら?>
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/10/02 11:01
トルシエが日本代表監督に就任したのは98年、43歳のとき。まさに働き盛りの熱量があった
それは日本に限らず、幾つかの国を除き世界のどこでも見られることだ。アフリカ諸国も同様に国内サッカーとインターナショナルサッカーのふたつがあるが、状況は日本以上に極端だ。というのも例えばモロッコは、国内に限定されるリーグ戦と、ほぼ全員が国外のクラブに所属し、うち80%はヨーロッパのクラブの選手たちが占める代表チームがある。チュニジアやコートジボワール、ナイジェリアなども状況は同じだ。
だがアフリカにはふたつのアフリカ選手権――通常のA代表同士でアフリカチャンピオンを決めるアフリカネーションズカップ(CAN)と、各国内のクラブに所属する選手のみに限定されたアフリカネーションズチャンピオンシップ(CHAN)があり、後者は選手のスカウト市場の側面が大きいとはいえ、大陸内のローカルサッカーが代表レベルでも活性化されている」
――そこは違いますね。
「ヨーロッパの国々もまったく同じ状況とはいえないが、フランスを例にとれば代表選手の80%がフランス以外の国でプレーしている。ムバッペ以外の主力はみな国外のクラブだ。世界の傾向として、大国はいずれも同じようになっている。ドイツやイタリア、スペイン、イングランドなどは国内組の比率がもう少し高いかも知れないが、南米諸国のアルゼンチンやブラジルにしてもほぼ100%が海外組だ。
そうした状況を鑑みながら君の質問に答えると、私は国内組の代表監督だった。国内リーグの中から選手を選んだ」
問われるのは海外組のレベル
――今日はあらゆる面であなたの時代に比べ進歩を遂げていますが、それは今あなたが述べたナイジェリアやコートジボワールのような国々と、プレーのレベルでも同じになったということでしょうか?
「今日ではナイジェリアやコートジボワール、モロッコと日本はまったく同じ状況にある。国内サッカーと、海外組――とりわけヨーロッパでプレーする選手によって構成される代表チームだ。ヨーロッパが、世界でもっとも魅力のあるサッカーを実現している。それが現実だ。W杯優勝国、またW杯に優勝しうる国は、イタリア、フランス、ベルギー、ドイツ、イタリア、スペインなどにせよ、ブラジル、アルゼンチンの南米諸国にせよ選手の90%以上はヨーロッパのクラブの選手たちだ。
日本もサッカー大国と同じ状況にあるが、それでは日本と例えばブラジルにはどんな違いがあるのか。それは選手が具体的にどこでプレーしているかだ。ヨーロッパのなかでもレベルの違いがある。ブラジル人たちはレアル・マドリーやバルセロナ、パリ・サンジェルマン、バイエルンなどビッグクラブでプレーする。そこで得られる経験や実績は、ごく平均的なクラブとは比較にならない。