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久保建英20歳が“独占インタビュー”に応えた 聞き手はパーソナルコーチ「彼から学べる技術とマインドは、日本サッカー界の財産となる」 

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2021/09/24 17:03

久保建英20歳が“独占インタビュー”に応えた 聞き手はパーソナルコーチ「彼から学べる技術とマインドは、日本サッカー界の財産となる」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

マジョルカに所属する久保建英。9月23日、膝の負傷のため戦列を離脱すると自身のインスタで明らかにした

中西 いくつかありましたが、東京オリンピックのメキシコ戦のゴールについての話は驚きました。堂安律選手が右のインサイドで蹴ったボールを、左のアウトサイドで蹴ったという話です。右のインサイドで上がってきたボールを右のインで蹴ることはあります。右のインサイドで蹴ったものは、左回転になるから、それを右のインサイドで蹴ると、ゴールに向かってちょっと浮きやすいというのはありますが、左のアウトという選択は僕の思考にはありませんでした。他の選手からも聞いたことがありません。ボールが左回転だから、それに逆らわないようにという考え方です。その前に別の試合で堂安選手から同じようなボールがきて、左のインで蹴ったボールがニアにいってブロックされたことがあったから、そうならないようにしたと話していました。ボールが転がってきたときに自分のインパクトまでの1秒あるかないかのところで考えたわけですよね。

 この話によって、子どもたちが、右のインカーブのクロスを左のアウトで蹴った方がボールの回転に逆らわないとか、ボールは浮くということを知って試せるわけです。

 それと、2人、3人の間を割っていくという話ですね。練習ではチームメイトも多少遠慮があるから、やはり試合の中でやっていくしかないと話していました。わかってはいましたが、実際にリーガでやるのは難しいことです。彼の考える「2人、3人はがせる選手」が日本代表に何人か存在しないと、ワールドカップで勝つのは難しいと思います。みんなが安全第一のプレーをしていたらダメだなと。1人ではなくて、2人、3人はがすためには、体からボールが離れないようにしなくちゃいけない。彼はそのトライをラ・リーガの、レアル・マドリー相手にやっているのです。一昨シーズンはアトレティコ・マドリー相手にもやっていました。2人かわして、3人目のヒメネスに止められてしまいましたが、彼はその大事さをわかっていて、取り組もうとしています。

――そういうプレーを増やしていって「どれとどれとどれって言えるようになりたい」と言っていましたね。それは、自分の引き出しを増やしたいということでしょうか。

中西 そうではなくて、そういうプレーがいくつかあると、相手が自分をリスペクトしてくれるようになるということです。「久保には簡単に飛び込めないぞ」「2人で行っても交わされるかもしれない」と、相手の思考にインプットできる。恐怖心を植え付けるとも言えます。味方もそういう選手にパスを出したいですよね。  

――日本代表のためにマジョルカで何をしているのかがわかりましたか。

中西 彼の話を聞きながら、日本代表がワールドカップで優勝国に勝とうとしていることは、マジョルカがレアルやバルサやアトレティコに勝とうとしている状況と似ていると思いました。立ち向かっていくマインドがです。できるかな?じゃなくて、本気でそれを目指しているのです。誰もやっていないことを成し遂げようとしている選手から出てくる言葉です。日本がワールドカップでベスト8に進むためには何が必要かと聞いた時、彼は間髪をいれずに答えました。日頃からそれをイメージしているからこそだし、自分を信用しているということです。サッカーは11人で戦うスポーツですから、みんながそうならないといけません。日本代表を目指す選手や、若い人たちがこのインタビューを読んで、そういう気持ちになってくれたら嬉しいです。

――久保選手への期待は高まりましたか?

中西 期待というか、たくましく感じました。嬉しかったです。

――『ナンバー』のひとつ前の大谷翔平選手特集を見て思うところがあったそうですね。

中西 あっ、大谷選手の次が久保選手の特集なんだと。背番号が同じ17番なんですよね。久保選手は本当は10番と7番が好きだそうですが、マジョルカでも日本代表でも今は17番をつけています。日本代表の17番と言えば長谷部誠選手ですが、長谷部選手以降なかなか定まらなかったこの番号に久保選手が収まることになりました。

 大谷選手のことは、日本ハムに入団する前から栗山英樹さんからよく話を伺っていたんです。二刀流という誰もやったことがないことをやろうとしていると。誰もが難しいと言ったものを栗山さんは反対しなかった。僕も久保選手に向き合っている時だったので、何かヒントはないかなと思って話を聞いていました。その中で、本人の意思を優先させる、本人が行きたい方向に行くのを助ける役目でありたいと思うようになりました。

 大谷選手と久保選手、この2人は、日本をこの後変えてくれる可能性のある選手です。今回のインタビューを子供たちが読んで、自分もこうなりたいって思ってもらいたいです。

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