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三笘薫と田中碧が抜け、ケガ人続出、ルヴァンとACL連続敗退… “横綱相撲”を取れないフロンターレは「悪い流れ」を断ち切れるのか
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2021/09/16 17:01
昨季から2021年前半戦は圧倒的な強さを見せてきたフロンターレ。しかし今がまさに正念場となっている
流れを引き寄せるために、いかに的確な交代策を行うのか。ベンチワークに注目が集まる中、ホン・ミョンボ監督が67分に2枚替えをしたのに対して、鬼木監督は先発の11人を出来るだけ長く引っ張り続けた。86分に知念慶を投入するまで動かなかったのである。
そこには理由がある。
一番は、この試合における川崎のチーム事情だろう。
ベンチメンバーには、2度の脳震盪から戦列復帰したばかりの塚川孝輝や経験値の浅い若手の他、丹野研太、安藤駿介というGK2人が名を連ねたという総力戦ぶりが台所事情の厳しさを物語っていた。
主将である谷口彰悟を筆頭に、大島僚太、車屋紳太郎、旗手怜央といった負傷離脱した主力数人が、この大一番でも不在。このレベルで強度を落とさずにプレーしながら、流れを変えるパワーを出せる選手層までは、さすがに取り揃えていなかった。ごまかしが効く相手ではないだけに、動きたくても動けなかったのが本音であろう。
「最後の時間で点を……そこまでは我慢かなと」
だからなのか、指揮官はピッチ上の選手たちで共有されている感覚やバランスを崩さないようにしているようにも見えた。サッカーでは「交代で逆に状況が悪くなった」という展開もよくあることで、逆に我慢して耐えていたことで状況が好転することも珍しくない。つまり「動かない」という決断も采配のひとつである。実際、交代の意図に関しては「我慢の時間だった」と試合後にコメントしている。
「最後の時間で点を取りに行く。短い時間でしたけど、そこまでは我慢の時間かなと思っていました。プラス、決して流れも悪いわけではなかった。最後でもう一つ、点を取りに行く作業を行なったということです」(鬼木監督)
我慢比べの末、延長戦でも決着がつかず、最後はPK戦の末に敗退。こうしてアジア制覇の可能性は、韓国の地で絶たれた。
今季上半期までは「攻守で圧倒する」前提だったが
この9月、チームはルヴァンカップに続き、ACLのタイトルも失うショッキングな結果となっている。
そしてこの戦いを終えて、はっきりしたことがある。下半期のチームは、これまでとは違うテーマに向きあっているということだ。
というのも、昨年と今季上半期までの鬼木フロンターレは、「攻守で相手を圧倒するサッカー」という部分が前提としてあり、その上で「どう勝ち切るか」をピッチで研ぎ澄ましていく集団だった。鬼木監督の仕事の領域も、そこのマネジメントの割合が多かったように見える。
だが現在は違う。