絶体絶命となった5人目。

　守護神チョン・ソンリョンは、イ・ドンジュンのPKをやり直しも含めて2本連続して止めるなど頼もしさを見せていた。だが最後のキッカーとなったユン・ビッカラムに、ネットを揺らされた。

　芝の影響があったのも事実だが、勝負とはそういうものである。

　そしてこの瞬間、モハンメド・アブドゥラ・ハッサン主審が120分の熱戦に決着を告げる笛を鳴り響かせ、川崎フロンターレの敗退が決まった。

試合内容は日韓首位同士のハイレベルな死闘だった

　試合内容に目を向けると、文字通りの死闘となった。

　日韓両リーグの首位同士の一戦として注目を集めたカードは、実に見応えのあるものだった。

　序盤はホームチームが主導権を握っている。前年度のACLチャンピオンにして、Kリーグでトップを走る蔚山現代は、巧みなビルドアップと、ターゲットになるオ・セフンへのロングボールを使い分けながら、川崎のプレッシングの網をかいくぐった。だが川崎も粘り強く応戦。20分前後にはシステムを4-3-3から4-4-2に変更し、守備陣形を修正しながら、徐々に攻勢を強めていく。

　切り替えが早く、互いに相手の隙を狙う展開になりながらも、ボールをめぐる局面における個人のバトルも実に激しかった。球際の激しさはあっても、ラフなファウルは少なく、あくまでフェアなプレーで両者がぶつかり合っていたのが印象的だ。

鬼木監督が85分まで先発の11人を引っ張り続けたワケ

　後半になると、球際で渡り合いながら技術を発揮し始めた川崎が完全に巻き返した。ボールを握り続け、連戦で運動量が落ち始めた蔚山を敵陣に押し込んでいく。だが押し込みながらも、決定打が出せない。

前半終盤の飛び出しなど、小林悠は局面を打開しようと奮闘していた　©Getty Images

　この試合、珍しく左サイドで起用された小林悠の動き出しは効果的だったものの、蔚山守備陣もタフなディフェンスで集中力を切らさない。ピッチには独特の緊張感があり、スコアレスのまま針が進んでいった後半途中からは、1点勝負のゲームとなる気配が漂い始めていた。

　これだけ拮抗した試合展開となれば、鍵を握るのは両指揮官の采配になる。

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