JリーグPRESSBACK NUMBER
三笘薫と田中碧が抜け、ケガ人続出、ルヴァンとACL連続敗退… “横綱相撲”を取れないフロンターレは「悪い流れ」を断ち切れるのか
posted2021/09/16 17:01
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
Getty Images
極限の戦いで勝負を分けるものは何か。
それは託された者に対する絶対的な信頼感である。
今年の川崎フロンターレは、天皇杯で2度のPK戦を経験していた。
2回戦のAC長野パルセイロ戦、3回戦のジェフユナイテッド千葉戦だ。どちらも5人目までもつれているが、最後は家長昭博が決めるか、GKチョン・ソンリョンがストップするかで勝ち上がりを決めている。
「最後は家長昭博が決めてくれる」
「最後はチョン・ソンリョンが止めてくれる」
そうした絶対的な信頼感は、PK戦における勝利の方程式だった。その意味で、川崎の日本人最年長の重鎮とチーム最年長の守護神の2人は、その研鑽した技術だけではなく、最後まで冷静に戦い続ける王者のメンタリティーをもたらしてくれている存在だったとも言える。
いつもなら涼しい顔で成功させる家長が
ところが、その勝利の方程式がACLラウンド16・蔚山現代戦で崩れた。
互いに2人が失敗して迎えた運命の5人目。川崎に来てから一度も失敗したことのなかった家長のキックがストップされたのだ。
ペナルティスポットにセットする際、家長は何度かボールを置き直している。120分の死闘を終えたピッチは酷く荒れており、このPK戦でも、2人目のキッカーとなった長谷川竜也が踏み込んだ際にズレて、ボールはクロスバーを大きく越えていた。
普段ならば、どんな重圧がかかっていても涼しい顔でキックを成功させる家長が、いつになく緊張した面持ちでボールと地面を凝視している。小刻みに足を動かしながら、次の瞬間にスピードを緩める、いつもの助走もなかった。そして狙いすましたはずのコントロールキックは、俊敏な横っ跳びを見せたチョ・ヒョヌにかき出された。