三笘と田中の海外移籍と主力離脱で揺らぐ大前提

　かねてから指摘されているように、三笘薫と田中碧というスペシャルな存在の2人が海外移籍したこと、そして現在は主力数人が離脱していることで「攻守で相手を圧倒するサッカー」という大前提が揺らいでいる。強者のサッカーが思うようにできていないのである。

三笘薫と田中碧がいなくなった今、フロンターレはどうやって“勝ち筋への折り合い”をつけるのか　©Getty Images

　例えば直近2試合、鬼木監督は前半のうちに4-3-3ではなく、4-4-2に変更する采配をしている。これまでであれば、相手が対策を練ってきても、少々のことではいじらなかった。むしろそれを「横綱相撲」で受け止めながら、自分たちの土俵に持っていくことで目標とする3得点を挙げる。今季はそうやって勝つスタイルだった。

　しかし現在は、その横綱相撲が取れない。

「圧倒した上でどう勝つのか」ではなく、「圧倒できない中で、どうやって勝つのか」。これまでとは前提の異なる問いに向き合わなくてはいけなくなっているのが、チームの現在地だと言える。

　その現状を認識しているからこそ、指揮官は強者の戦い方である4-3-3システムにはこだわらず、システム変更を施しながら、懸命に勝ち筋を見出そうとしているようにも思える。

　理想を掲げて死ぬのではなく、あの手・この手で勝機を手繰り寄せようとしている。それだけに、紙一重の差で結果が伴わなかったのがもどかしいが、ここはチーム全体で我慢すべき踏ん張りどころでもある。チームとしては理想と現実の折り合いをつけている最中で、ある意味では、根比べだ。

徳島、鹿島戦もホテル生活を余儀なくされる

　帰国して迎える週末の徳島ヴォルティス戦、来週の鹿島アントラーズ戦はアウェイでの連戦だが、チームは2週間のホテル生活を余儀なくされるなど行動制限の中で試合に準備していく環境になる。

「次に進めないのは残念だが、すぐに試合がくる。悪い流れを切らなければいけない」

　キャプテンマークを巻いた登里享平の試合後の言葉である。

　コンディション的にもメンタル的にも難しい時間になるのは明らかだが、この流れは勝つことでしか変えていくことができないことは、彼だけではなくチーム全員が分かっているはずだ。

　シーズン前の新体制発表会見で鬼木達監督が口にしていた「リーグ戦連覇とアジア・チャンピオンズリーグの制覇」という今季の大きな目標は叶わなかった。

　しかしリーグ連覇はまだ残っている。

「このまま、終わってたまるか」

　選手全員が、そう思っていると信じている。