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総資産1兆円超のアブラモビッチと王者チェルシー、「約350億円軍団」のマンU、メッシら根こそぎ獲得PSG… CLは“新自由主義の頂上バトル”
posted2021/09/14 17:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
歴史と伝統を誇る名門から、超巨額資本によって生まれ変わった新興勢力へ──。
欧州フットボールの覇権の行方は、着実にその方向へ進んでいる。昨季のチャンピオンズリーグ決勝は、ロシア人ビリオネアが所有するチェルシーとUAEの国家ファンドが支えるマンチェスター・シティの対戦となった。
外国資本でエリートの仲間入りを果たしたクラブ同士による史上初の欧州頂上決戦は、前者に軍配が上がった。また一昨季には、カタールの王族が実権を握るパリ・サンジェルマンが、初めてCL決勝に辿り着いている。その時は古くからの巨星のひとつ、バイエルン・ミュンヘンが意地を見せたが、もうこの潮流は止められそうにない。
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今夏の移籍市場でも、その流れは顕著だった。パンデミックの影響や杜撰な経営によって、かつての覇者たちはエースや大黒柱を放出せざるを得ず、その受け皿となれたのは、疫病にもびくともしない富を持つクラブだけだった。
リーガの会長は「PSGはフットボールの敵」と怒り心頭
最大の勝者は、パリ・サンジェルマンだ。バルセロナからリオネル・メッシ、レアル・マドリーからセルヒオ・ラモス、インテル・ミラノからアフラフ・ハキミ、ACミランからジャンルイジ・ドンナルンマを迎えた経緯は、すべて上記の構図で捉えられる。スペインとイタリアを代表する4つの強豪は、いずれも苦しい台所事情を抱え、人員を整理するほかなく、大いなる野望と無尽蔵の資金を持つPSGがそのすべてを受け入れた。
クラブを保有するカタール人たちは、来年11月に母国で開催されるW杯の前に、是が非でもCLタイトルを獲得したいのだろう。前述の4人に加え、リバプールからジョルジニオ・ワイナルドゥム、スポルティングからヌーノ・メンデスも釣り上げた。
リーグを代表するスター選手たちを引き抜かれて、ラ・リーガのハビエル・テバス会長は「(PSGは)フットボールの敵だ!」と怒り心頭に発しているようだが、パリの街は歓喜に沸いている模様。メッシと華の都の幸福な関係(とその途方もない報酬)については、欧州蹴球名鑑に掲載されているストーリーをご一読いただきたい。
ルカクのチェルシー復帰も似た背景が
欧州王者チェルシーが前線の絶対軸として迎え入れたロメル・ルカクの移籍にも、似た背景がある。