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総資産1兆円超のアブラモビッチと王者チェルシー、「約350億円軍団」のマンU、メッシら根こそぎ獲得PSG… CLは“新自由主義の頂上バトル”
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/09/14 17:00
メッシやセルヒオ・ラモスらを根こそぎ獲得したPSG。念願のCL制覇なるか
インテルは昨季のセリエAを制したにも関わらず、経営母体の中国企業、蘇寧グループが財政難に陥っているため(昨季の中国スーパーリーグを制した姉妹クラブ江蘇FCは今季開幕前に活動停止)、優勝の立役者アントニオ・コンテと袂を分ったうえ、先述のハキミに加え、エースのルカクも換金せざるをえなかった。
イタリア王者の首をつなげた推定1億1500万ユーロ(約149億円)の移籍金も、総資産146億ドル(約1兆6000億円)と言われるチェルシーのロマン・アブラモビッチ会長(米『フォーブス』より)にとっては、痛くも痒くもないのだろう。
チェルシーはさらに、アトレティコ・マドリーから期限付きでサウール・ニゲスを加えて中盤を補強。ローン帰りの下部組織出身者トレボー・チャロバーは、守備のマルチロールとして期待できる。その一方で、タミー・エイブラハムら生え抜きを売却しているが、トーマス・トゥヘル監督はコンテやジョゼ・モウリーニョら過去の外国人指揮官たちとは異なり、アカデミー育ちの面々も重視。その証拠に、メイソン・マウントとリース・ジェイムズは完全に定位置を占め、チャロバーにも出番を与えている。
マンチェスター勢も精力的な補強を展開
CL決勝でチェルシーに敗れたシティは、英国史上最高額となる推定1億ポンド(約152億円)でアストンビラの人気者ジャック・グリーリッシュを獲得。PSGと同様に後ろ盾は中東の国家ファンドながら、アブダビの首長たちはより長期的に物事を進めるため、ハリー・ケインの移籍交渉で強硬な交渉人として知られるトッテナムのダニエル・リービー会長が1億5000万ポンド(約228億円)の値札を頑なに提示し続けると、最終的に断念した。
クリスティアーノ・ロナウドにも食指を動かしたようだが、こちらはペップ・グアルディオラ監督があまり乗り気ではなかったらしく、最後は同じ街のCR7の古巣に譲った形だ。クラブ史上最多得点者セルヒオ・アグエロをバルセロナに放出し、純粋なストライカーは不在となるが、偽9番が務まるタレントは何人もいるので、大きな問題にはならないか。
マンチェスター・ユナイテッドはアメリカのユダヤ系富豪一家のオーナーとその腹心があらゆる商業価値を高め、多額のスポンサー契約を次々と締結。そして中東やロシアの天然資源の保有者たちが運営するライバルたちに負けないほどの資金を投じ、ジェイドン・サンチョ、ラファエル・バラン、そしてロナウドを迎えた。