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〈凱旋門賞“2年連続”2着〉現地前哨戦での好走がオルフェーヴルの偉業を生んだ…知られざる「鼻先蹴り上げ事件」が示す“日本馬勝利の条件”
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byAFLO
posted2021/09/12 06:00
2013年の凱旋門賞で2年連続の2着に輝いたオルフェーヴル
海外遠征で重要なのは、アクシデントへの対応力
よって、1週前追い切りは改めて日をおいて行う事になった。追い日がずれる事自体はレースまでの間隔があるため何も問題はなかった。ただ、1つだけ、当初の予定に狂いが生じた。土曜日にずれた事でスミヨン騎手の追い切り騎乗が出来なくなったのだ。池江調教師は言う。
「スミヨンが『その日だと遠方の競馬場で騎乗するから朝の調教は乗れない』と。なのでユースケ(藤岡佑介騎手)に乗ってもらう事にしました」
こうしてレース1週前の土曜日、9月7日に追い切られたオルフェーヴルの背には藤岡佑騎手が跨った。すると絶好の動きを披露。併せた馬を子供扱いにしてゆうゆうとモーニングワークを終えた。
「良い追い切りが出来ました。ユースケがうまく乗ってくれました」
その様を見て、当時そう語った池江調教師。そして、その感触に誤りがなかった事は9月15日に証明された。この日、行われたフォワ賞に出走したオルフェーヴルは、スミヨン騎手を背に素晴らしい瞬発力を披露。ドバイシーマクラシック(GI)3着などがあるベリーナイスネームに3馬身の差をつけて圧勝してみせた。
一つ間違えばあらぬ方向へと進路を失いかねないアクシデントも、陣営の見事な舵取りでリカバリーすると、本番の凱旋門賞でも2着に善戦した。ただでさえ競馬は何が起こるか分からないが、海外遠征ともなるとハプニングの発生する可能性はグンと上がる。モノが動けば摩擦が生じるのは世の常なのだ。変事を避けるのではなく災禍に見舞われた時にどう対処するか。海外遠征で大切なのはそんな事なのだと教えてくれた出来事であった。
さて、今年のフォワ賞にはディープボンド(牡4歳、栗東・大久保龍志厩舎)が出走を予定している。果たしてどんなストーリーが待っているのか。本番へつながるレースとなる事を期待したい。
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