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「悔しさが一番のモチベーションに」…桐生祥秀に細かく聞いた「どうして“100m9秒台”で走れたのか?」

posted2021/09/09 11:00

 
「悔しさが一番のモチベーションに」…桐生祥秀に細かく聞いた「どうして“100m9秒台”で走れたのか?」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

日本人初の100m9秒台を記録し、2017年の「Number MVP」を受賞した桐生

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

PROFILE

photograph by

Takuya Sugiyama

4年前の9月9日は桐生祥秀選手が日本人初の9秒台スプリンターとなった日です。そこで、2017年の「Number MVP」を受賞した際のインタビューを特別にWebで公開します。<初出:Number942号 2017年12月20日発売、肩書きなどすべて当時>

2013年、高校3年生という若さで10秒01を記録し、日本陸上界悲願の9秒台にリアルな手応えを予感させた桐生祥秀。そこから4年、多くの有望選手が現れるなか、念願のブレイクスルーを果たした彼が、2017年とあの日の記憶を辿った。

――Number MVP、おめでとうございます。

「ありがとうございます」

――9月9日、陸上男子100mで日本人初の9秒台をマークされての受賞です。改めてその日のことをお話しいただけますか。

あの日は足の調子がよくなかった

「あの日は準決勝が終わった段階でも足の調子がよくなくて、決勝をどうするか迷っていたんです。ただ、大学生活最後の100mだし、ここで終わったらキリが悪い。優勝してシーズンを終わりたい、と思って出場しました。あのレースで人生が変わりましたし、出ておいて良かったです(笑)」

――何か特別な予感はありましたか?

「まったくなかったです。スピード練習も十分にできていないので、記録が出るとは思わなかった。いつもなら走る前は“前半を意識して”とか考えたりするけれど、あの日は珍しく友達から“応援に行くから見といて”って言われたので、スタンドを見回して友達を探したり……。あとはいつも通り走れれば勝てるだろうって思っていたくらい。最後に楽しく勝って終わろう、という程度の気持ちしかなかったです。

 それに、あのレースは走り終えてからのインパクトが強すぎて、レース自体のことは全く覚えていなくて。もともとレースのこと、大体すぐに忘れちゃうんです(笑)。ただレース展開については、足の調子もあるし、序盤はみんな前にいるだろうと想像していたので、50mまでは誰が前にいても焦らず、中盤以降で追い上げようと思っていた。だから最初に多田(修平)君が前にいても、想定内でした」

――レースでは通常48歩で100mを走り切るところが、47歩でした。

「僕、1歩が2m20cmくらいあるんです。だから1歩少ないのはすごく大きな違いでした。レース前は、足の調子が悪くて、速い動きの練習があまりできなかったんです。代わりにゆっくりと大きなフォームで250mから300mを走る練習を繰り返していました。それがうまくはまったんだと思います。長い距離を走っていた分、100mを楽に感じて、後半の伸びにつながったのかなって。ただ、それも夏にきちんと速い動きの練習をしていたから活きたこと。もし長い距離の練習ばかりやっていたら、タイムは当然遅くなるでしょう。そのバランスがちょうどいい感じで合致したのかなと。ただ、今年は4月のほうが仕上がっていて、出雲大会や織田記念では向かい風で10秒0台を出していました。あの時もし今回と同じ追い風1.8mだったら、もっといいタイムが出ていたかもしれない。陸上に“もしかしたら”はないんですけど(笑)」

――必ずしも会心の走りではなかった?

【次ページ】 いや、僕もまだまだ若手ですから(笑)

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