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「悔しさが一番のモチベーションに」…桐生祥秀に細かく聞いた「どうして“100m9秒台”で走れたのか?」 

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林田順子

林田順子Junko Hayashida

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2021/09/09 11:00

「悔しさが一番のモチベーションに」…桐生祥秀に細かく聞いた「どうして“100m9秒台”で走れたのか?」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

日本人初の100m9秒台を記録し、2017年の「Number MVP」を受賞した桐生

いや、僕もまだまだ若手ですから(笑)

「なかったですね。そもそも僕、会心のレースって分からないんですよ。あの中盤は良かったとか、今年の4月は全体的に良かった、ということはあっても、すべてにおいて完璧だったレースはまだない。だから自分の100%ってまだ分からないんです」

――シーズン全体のお話もお聞きします。当初は世界陸上ロンドンを目標にしていたけれど、代表選考を兼ねた6月の日本選手権は4位で選外となってしまいました。

「2016年は日本選手権にピークを合わせたため、リオ五輪では調子を落としてしまい予選落ちでした。だから今年は世界陸上に照準を合わせ、日本選手権直前までバンバン海外遠征を重ねました。そこで疲れが出たとしても、代表入りすれば世界陸上までの1カ月できちんと練習できると考えていたんです。日本選手権で1位になれなくても、3位以内には絶対入れるから、本番の世界陸上で取り返そう、と……。そこが僕の甘かった部分ですね。海外遠征で予想以上に疲れが溜まっていたし、他の選手もすごく調子が良くて。今の日本のレベルは本当に高くて、ちょっとした甘えに足をすくわれる。そういうことを学んだ1年でもありましたね」

――日本選手権ではサニブラウン選手ら、若手選手も活躍しましたが、彼らの存在も刺激になったのでしょうか。

「いや、僕もまだまだ若手ですから(笑)。31歳の藤光(謙司)さんが彼らを若手と呼ぶのは正しいと思うけど、僕は陸上界でも日本代表でも年下の方。実際、先輩に刺激を受けるほうがまだまだ多い。僕にとって一番のライバルはやっぱり、3歳年上で、勝ったり負けたりの中で互いに成長してきた山縣(亮太)さんです」

3つ全部獲ってるの、日本では僕だけです

――その世界陸上ではリレーで代表に選ばれて、銅メダルを獲得しました。

「ロンドンは……長かったです。個人種目がない世界大会は初めてだったんです。みんなと一緒に2~3週間前からロンドンに入って、個人種目に出る選手は早めに調整を進めていったけど、リレーは大会最終盤の種目。一緒にペースを上げるとピークが早く来てしまうので、ゆっくりするしかない。(同じリレーだけの出場だった)藤光さんと“暇ですよね”って、最初は観光してました。リレーについては、去年から“メダルを獲って当たり前”のような雰囲気になっていたけれど、予選終了時はこのままではヤバいと感じていたので、メダルが獲れて本当によかったです。これで僕はオリンピックと世界リレーと世界陸上、3つの世界大会のリレーでメダルを獲ったことになります。3つ全部獲ってるの、日本では僕だけです。それはちょっと嬉しいですね(笑)」

――個人不出場の悔しさがバネとなって9秒台が出た、ということも考えられますか。

【次ページ】 悔しさが一番のモチベーションになりました

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