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「みんな同じ選手です」オリンピック、パラリンピック両方に連続出場、ナタリア・パルティカの挑戦は続く《過去には石川佳純に勝利》
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2021/09/06 06:00
パラリンピック卓球女子のシングルス5連覇とはならなかったが、パルティカは試合後、前向きにこれまでの歩みを振り返った
ふだんは健常者の大会でプレーするパルティカは、日本の選手との接点も少なくない。2012年の世界選手権団体戦で日本と対戦したときは第3試合で当時19歳だった石川佳純と対戦、2-3と拮抗した勝負を繰り広げ、2015年のワールドツアー・ポーランドオープンでは石川に4-2で勝利をおさめている。2014年のワールドツアー・グランドファイナルのダブルス準々決勝では福原愛、若宮三紗子と対戦し4-2で退けた。
また、リオ五輪団体戦のダブルスでは福原、伊藤美誠と対戦。敗れたものの1-3で競り合う場面も見せた。
これまで国内外のメディアの取材の中で、何度かこう語ってきた。
「みんな、同じ選手です。私にとって障害は何でもありません」
サウスポーのパルティカは、サーブの際には、右腕の肘の内側あたりにボールを乗せてトスを上げる。卓球ではラケットを握っていない側の手である「フリーハンド」の重要性がしばしば言われる。ボールを打つときに姿勢のバランスをとったり、あるいは強打の際の威力の向上など、さまざまな面にかかわるからだ。
でもプレー中のパルティカは、培ってきたバランス感覚とともに、右腕が短いことを感じさせない。対戦した日本の選手の中から、「プレーしていて、(障害があると)感じないです」という言葉が出たこともある。
グッドプレイヤーであり続けるために
双方でプレーしてきた理由は、パルティカの次の言葉にある。
「卓球こそ人生です」
何にもかえがたい存在だからひたむきに打ち込み、自分なりのプレースタイルを確立し、より多くのゲームの機会を求めた。
そしてより強い選手を求め、自身の成長を志してきた。だから挑戦を続けてきた。
パラリンピックの準決勝で敗れたあとには、こうも語っている。
「今日は負けたけれど、これまでに4回優勝しています。それは私が『グッドプレイヤー』であることを示しています」
そこには、自身の歩みへの誇りがあった。
これからも2つの大会へ「チャレンジを続けていきます」という。
これまでと変わらない姿勢を堅持するパルティカにとっては、「勝つのが当然」と思われていたパラリンピックの舞台で敗れたことも、再び頂点を目指すための活力となるのかもしれない。そしてオリンピックでも、よりよい結果を求めていくだろう。