オリンピックPRESSBACK NUMBER
五輪惨敗から1カ月…桐生祥秀「走り方からぜんぶ変えました」 日本スプリント勢が世界と戦えなかった“2つの理由”
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byJIJI PRESS
posted2021/09/04 11:03
東京五輪で惨敗した日本のスプリント勢。再スタートした選手たちの証言から「何が必要なのか」を考える
桐生は、「この大会からスタブロ、走り方からぜんぶ変えました。何が足りないのか。どこがどう変わるのか。まずは試してみて、そこから冬季練習に入っていこうと思っています」と話していた。技術的にはまだまだ固まっていないが、ひとつの方向性としてパワーアップの必要を感じているという。
「この3週間はウエイトを結構やりました。今までは筋肉をつけすぎると走りづらいかなと思っていたんですけど、そんなことを言っている場合じゃない。これまでは10mラインでだいたい8歩目でした。それが今は7歩ちょっとでつくようになりました。歩数をトータル1歩から1歩半狭めようと思ったら、もっと爆発的なスタートと中盤が必要になるんです。9秒8とか7に向かうとなると、今のままではちょっと足りない」
日本陸連科学委員会によると、桐生が9秒98をマークしたときは、スタートから「47.3歩」で100mラインに到達している。桐生の言葉から考えると、「46歩」で走り切れば、野望に近づけると感じているようだ。
9秒台を2度マークした日本人選手はサニブラウンだけ
4年前の夏、桐生が福井の地で9秒台に突入して、その後、小池、サニブラウン・ハキーム、山縣も10秒の壁を突破した。現在の日本記録は9秒95で、9秒台を2度マークした日本人選手はサニブラウンしかいない。日本のなかで「9秒台」というタイムは依然として“特別”なものだった。そして、世界大会の準決勝を9秒台で駆け抜ければ、「ファイナル」に進出できる、と信じていた。
しかし、東京五輪でそんな感覚が崩壊する。
男子100mプラス通過のタイムは予選が10秒12、準決勝は9秒90と大幅にアップしたのだ。予選で敗退した日本勢にとってさらに衝撃だったのは、9秒91のアジア記録を保持していた蘇炳添(中国)が準決勝を9秒83(+0.9)のアジア新記録で突っ走り、全体トップで通過したことだろう。
桐生から「9秒8、7」という言葉が出たのには、そんな背景があった。
決勝8人中5人が着用していた「新スパイク」とは
一方、小池は“新スパイク”も試している。