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<次世代続々>水谷隼がパリ五輪を託した「頼もしい後輩達」3年後の男子卓球エースは張本智和と……?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2021/08/29 11:01
パリ五輪で大黒柱として期待される18歳の張本。26歳の丹羽はパリ五輪については「まだぼんやりしている」と語った
「1日かけて自分なりに説得してみましたが、水谷さんの意思は固いです。それくらいの覚悟を持ったからこそ(混合ダブルスの)金メダルや団体の最後も決めてくれたと思うので、水谷さんのことは水谷さん自身で決めていただいて、尊重したいと思います」
水谷の跡を継いでいこうという決意がそこにうかがえた。
リオに続き2大会連続のメダルを手にした丹羽は今後について、しばらく休んで考えたいとしている。パリ五輪に向け、男子卓球は今が転換期と言っていいだろう。日本を取り巻く状況を考えても、そう捉えられる。
日本が中国に次ぐ位置を固めた感のある女子に対し、男子は、トップが中国である点は変わらないものの、日本を含め、それに続く国々に大きな差がない状況が続いている。今大会の団体戦で準優勝のドイツや日本が3位決定戦で戦った韓国などともしのぎを削ってきた。
日本は水谷が退く意向を示したが、ドイツや韓国の主軸もベテランで、新たな世代を待っている点で共通する。そこで競り合いつつ中国を追う、倒すためにも、選手の成長が待たれる。
頭角を現す次世代のエース候補たち
期待を集める若い選手たちも台頭しつつある。東京五輪のリザーブメンバーに入った宇田幸矢は2020年の全日本選手権優勝で脚光を浴びた。2019年世界選手権代表に選ばれた木造勇人、6月のアジア選手権代表選考合宿で水谷を破った戸上隼輔も楽しみな存在だ。
大学生の彼らに加え、中学2年生の松島輝空も将来を嘱望される1人だ。小学6年生で出た全日本選手権ジュニアの部で準優勝を果たし、今年1月の同選手権ジュニアの部はベスト8だったが、一般の部にも2年連続で出場し、注目を集めた。
むろん、そのほかにも今後が楽しみな選手たちがいる。女子同様、長期的に育成に取り組んできたこともあって、若い世代が着実に頭角を現しつつある。
その中で国内の競争に打ち勝ち、日本代表として世界で活躍していくには、最終的な目標をどこに置くかが重要になってくるのではないだろうか。水谷が早くから海外を視野に入れてドイツで武者修行をしたように、国内での争いにとどまらずどこまで意識を高く持ち続けられるか、日本を背負うくらいの気概を抱けるか、その意識の差が分かれ目となるだろう。期待を集めつつ伸び悩んだ選手もこれまでにいただけになおさらそう感じるのだ。
転換期はチャンスでもある。そしてチャンスをいかそうとする選手たちの存在が、日本男子を引き上げていくことにもつながる。
オリンピックが終わって間もない今月30日、今年11月に行なわれる世界選手権の日本代表選考合宿が開催される。
それはパリへ向けての、3年後に向けての出発点でもある。