《愛される先輩》水谷隼32歳が“後輩2人”を語る「チョレイ！と叫ばない張本が楽しみ」「伊藤選手は突拍子もない人で…（笑）」

　金メダリスト・水谷隼は、豪放磊落な人だった。

　率直でユーモアがあり、時にブラックが混じる。もう20年以上、日本、そして世界で戦ってきたから、記憶の貯蔵庫は宝の山だ。

　今回は最新の思い出、東京オリンピックで戦ったふたりの若手について話してもらった。　

　伊藤美誠と組んで獲得した混合ダブルスの金メダルは、まさに金字塔だった。1988年のソウル大会で正式競技として採用されて以来、日本にとって初めての金。

　しかも、その過程が劇的だった。準々決勝、ドイツペア相手の大逆転劇、決勝では難攻不落の中国ペアに対し、最終ゲームに怒涛のポイント連取で圧倒。静岡県磐田市出身のペアは、試合を重ねるごとにステージが上がっていった。水谷はいう。

「オリンピックに向けて、チームとしていろいろな組み合わせを試しましたが、たぶん満場一致でこのペアになったと思います。相性というか、意外性があった感じでしょうか。たしかに組んでみると、伊藤選手のプレーは、『えっ、そこに打つの？』という想定外の瞬間はたしかに多いんです。組んでる僕でさえそう思うんですから、相手にとってはもっと想定外ですよ（笑）」

混合ダブルス決勝で中国の許昕・劉詩雯組を破り、日本卓球初の金メダルを獲得した水谷隼・伊藤美誠組　©Getty Images

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「彼女もさすがに緊張していたんじゃないですか」

　クリエイティビティあふれ、物怖じしない伊藤だが、オリンピックが始まるといつもと違った雰囲気があったという。

「さすがに緊張していたんじゃないですかね。彼女の良さが発揮しきれていなかったというか。準々決勝のドイツ戦では、最終ゲームに2―9とリードされてしまい、ちょっとゲームを諦めちゃったかな……とパートナーとして感じた瞬間もありました。でも、そこで1本、1本をふたりで諦めずに拾って、逆転勝ちして波に乗れました。自分の卓球人生で、2―9から逆転勝ちしたのは初めてでしたし」

　準々決勝の関門を突破すると、伊藤の気持ちがほぐれ、自由になっていくのが感じられたという。

「準決勝からは、ゲームが進むにつれて伊藤選手らしさが出てきました。いい流れになってきて、僕の方としても伊藤選手のスタイルに“慣れ”が出てきたんです」

「とにかく突拍子もない人なので（笑）」

　伊藤美誠に対して慣れるためには何が必要なのか。

　水谷は「試合を重ねる」ことと「性格を理解する」という2点を挙げた。

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